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蛇足
相談者堀田彦星様
「なぁ、池ちゃん!そーだん乗って!」

「あ?」





蛭池はイチゴミルク片手に、突然自室に現れた彦星をジッと見つめた。

やはり自室でもグラサンは常備である。

「何だ彦坊、藪から棒に」

蛭池がイチゴミルクを床に置いて答えると、彦星は遠慮なく蛭池の部屋へと入ってきた。

「やぶからぼー?やぶからぼうーって何だ?!」

ここに楓が居たならば、最初から話を逸らすなと呆れた顔をしていた事だろう。

しかし、ここには楓は居らず居るのは彦星と蛭池のみだ。

「いいか彦坊、そういう事は全て楓に聞け。いいな?」

故に蛭池は全ての彦星の疑問を楓へと放り投げた。

彦星も彦星で、蛭池の口から出た“楓”という言葉に途端に顔を笑顔にすると大きく頷いた。

「うん!やぶからぼーは楓に聞く!」

「そうだ、わからねぇ事は全部楓に聞くのが一番だ」

本当に全てを楓へと放り投げたた蛭池は一口イチゴミルクを飲むと、彦星へ向き直った。

「んで?彦坊、相談ってのは何だ」

「おー!そーだった!オレ池ちゃんにそーだんしに来たんだった!」

忘れるとこだった!そう言って笑う彦星は、蛭池の部屋に来てまだ3分もたっていなかった。

そんな彦星を、蛭池は手を顎に当てて見ていると、何か思い当たったようにボソリと呟いた。

「相談……それってもしかして楓の事か?」

蛭池のその言葉に彦星は目を見開いた。

「何でわかったの!?スゲー池ちゃん!!」

身を乗り出して尋ねてくる彦星の頭を蛭池はボフボフと叩きながら落ち着かせた。

「彦坊、オメェ気付いてねぇかもしれねぇが、最近彦坊の口から出てんのは楓の話ばっかだぜ?」

そう話す蛭池の声は何やら面白がるような、楽しそうな気色を含んでいた。

「オレ……楓の話しかしてねー?」

「あぁ、楓ばっかだな。最近の彦坊は」

「あー、そーかも。オレ最近楓の事ばっか考えてる!オレの中は楓でいっぱいだ!」

そう言って笑う彦星に、蛭池はフムと考え込んだ。


もしかすると

もしかするのかもしれない

蛭池は目の前に居る幼なじみに対して、ある仮定を立てた。

彦星は楓の事を
好きなのではないのか

と。

もちろん“好き”というのは、世間一般でいう友達や家族に対して持つ“好き”ではなく

本来なら異性に向けるべき性欲を伴った“好き”である。

それは今までも薄々そうではないかと予想はしていた事だ。

だが、今まで蛭池は毎回それを否定……いや、否定とまではいかないが、考えなおしていた。


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