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蛇足

よしおが自分の言った事に後悔し、楓の顔を見れないでいる と楓は突然「あーあ」と手で顔を覆った。

そしてすぐに手を離すとクルリとよしおに向き直った。

「よしおくんの言う通りなんだよね」

よしおがハッと楓を見ると、楓は眉を寄せ困ったような笑顔でよしおを見ていた。

しかし、よしおにはその楓の笑顔が痛みを隠しているように見えて仕方なかった。

「俺さ、今までいっつも親の言いなりで……だから自分で物事決めた経験ってあんまり無いんだよね。だからだと思う。こんなにウジウジすんのは」

苦笑しながら話す楓によしおはただ黙ってその言葉聞く事しかできなかった。

自分が言った理不尽な言葉のせいで楓はきっと傷付いたに違いない。

そうでなければ楓はこんな風に笑ったりはしない。

まだ出会ってから日は浅いが、よしおにもそれくらいはわかった。

そして楓にそんな顔をさせたのが自分である事にヒドく腹が立った。

「だから高校入ったら親も居ないし自分でいろいろ決めようって思ったんだけど……ダメだなぁ」

「………っ」

よしおは楓の辛そうに歪められた顔を見てサッと視線を逸らした。

傷付いたのは楓。

そして傷つけたのは誰でもない自分自身。

なのに

それなのによしおは、誰から殴られるよりも、喧嘩で刃物を持ち出された時よりもよしおは痛くて仕方なかった。


「彦星ともなんだかんだ言って俺ずっと一緒に居るじゃん?アイツ凄い強引なところあるけど…それは単なる言い訳で…俺は結局今度は彦星に何でも決めてもらってる気がするんだよ……。」

「……………」

「だから俺はバイトくらいは彦星から離れてやってみなくちゃいけない気がするんだ。」

そう言って笑う楓によしおは小さく呟いた。

「……来いよ」

「へ?」

「俺んとこ来いよ」

ハッキリと言われた言葉に楓はポカンとする。

よしおは未だに楓から視線をそらしたままだ。

「だから……俺ん所のバイト先に来いっつってんだよ!」

乱暴に言われたその言葉の意味を理解するまで、楓はしばらく唖然とよしおを見つめたままであった。

「い……いいの?」

「駄目なら誘わねぇよ。まぁバイトをするかしないかは………“お前”が決めろ」

よしおにそう言われ楓はハッとした。

よしおは楓に“決定”させようとしているのだ、と。

そしてしばらく黙りこくったままの楓に、よしおがチラリと視線を戻すとそこにはよしおを一心に見つめる楓の姿があった。

その途端よしおの顔に熱が集中する。

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