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蛇足

今にもよしおに飛びかかりそうな彦星を尻目に、楓はこの緊迫した状況の打開策を考えていた。

楓としては、職員室の前で乱闘などかなり避けたい事態だ。

それに自分が関わるのは更に……いや死んでも避けたい。

今、楓は一刻も早く玉泉院へ帰って求人雑誌をめくらなくてはならないのだ。

そして一刻も早く時給の良いバイトを探し出さなくてはならない。

今日の楓のその予定を円滑に進める為には………隣のケンカ馬鹿が何かしでかす前に、弱者よしおをここから避難させなければならないのだ。

思うや否や楓は動いた。

「よしお君、今帰り?」

楓はそう言いながらよしおに駆け寄った。


よし、とりあえず俺が二人の間に立ってしまえば彦星も無理によしお君に殴りかかる事はないだろう。
彦星曰く俺は大親友らしいからな。


そして、彦星との間に楓という壁が出来たよしおは安堵の表情を見せた。

「え……ま、まぁな」

「そっか。俺達も今から帰るところなんだ。なぁ、彦星?」

そう言って楓が彦星に振りかえると彦星は更に真っ黒なオーラを放ちながら、よしおを睨んでいた。

「……………………」

よしお君また怖がってるし……。
そろそろマジでよしお君を彦星の視界から外さないと……俺なんか飛び越えて殴ってしまいそうだな。

「そういえばよしお君。教室で……えーと、てつや君達が捜してたよ。早く行ってあげたほうがいいと思うケド」

もちろん嘘だ。
多分よしおもそれは重々承知だろう。

「あぁ……、わかった」

よしおはそう言うと足早にその場を去って行った。
去り際にワリィ、と小さな声でよしおは呟いた。

妙な所でよしおは律儀だな、と楓は思う。

以前、楓をパシリにして彦星からぶっとばされた後もよしおは楓に謝罪しに来たのだ。
他にも3人居たが、謝りに来たのはよしおだけだった。

だから楓もよしおの事はパシリにされそうになった前例があっても、嫌いではなかった。

よしおが見えなくなると楓は彦星のもとへ戻った。
不機嫌そうな顔だが黒いオーラは消えていた。

「彦星、いい加減にしろよ。よしお君は悪い奴じゃないって言ったろ。」

「俺、知らねー」

「彦星…」

「楓、勝手に友達作って。ズリーよ。俺が楓と最初に友達になったんだぞ。」


あぁ、そう言う事か。
全く……小学生レベルの友達独占欲だな。

楓は内心苦笑した。

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あきゅろす。
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