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蛇足
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「個人に力の配分を偏らせるから、そのようなリスクが生まれてしまう。さて、ではそのリスクを少しでも軽減させる為には一体どのような方法で他学年との連携をとっていけばいいでしょう?」

楓はそう口にだしそうになる自分を必死で抑え込む。

わかっている、これでは絶対に彼らには伝わらない。

楓は腕を組むと、すぐに今まで長い事使用されて居ないであろう黒板の前に立った。

そして、おもむろにチョークに手にすると、そのままカツカツと黒板に何かを書き始めた。

「はい、先輩方!これを見て下さい!」

楓がチュークで指示した場所には、何やら人間のような形をした一番大きな物体と、その脇には同じような人間と思わしき物体が2つ、一番大きな人間らしき(以下略)と手をつないでいる絵であった。

そしてご丁寧に小さな方の2つの人間の絵の上には「先輩に付いて行くよ!」という吹き出しまでついている。

「はい!この大きな人が道本先輩だとします!」

「はぁ!?お前ふざけんな!それがオレってお前……喧嘩売ってんのかオレに!?」


楓の思わぬ発言に、今まで呆けた表情で楓を眺めていた道明の表情が一気に険しくなる。

そんな道明に周りは「あれ道明だってー!」と大爆笑し始めた。

此処は小学校か、という突っ込みを楓は必死で抑え込むと、更に今度は小さな2つの人間をチョークで指示した。


「そして、この二つが1年生と2年生です!」


楓がそう口にした瞬間、更に教室中が笑いに包まれた。


「お前、絵へたくそ過ぎだろ!」

「あははは、クソだなこの絵!」

「ヘンタクソー!」

「俺のがウメェし!」

そう口ぐちにはやし立てる3年に、楓はこめかみを引くつかせた。

誰の為の低レベルな説明だと思っているんだ、コイツら。

「悪かったですね!絵がヘタで!」

楓は昔から美術だけは3以上を取った事がなかった。


楓がはやし立てる3年の言葉に、しだいに顔が熱くなるのを感じて顔を俯かせた。


「……………」

そんな楓の様子に、最初は楓の絵率先して文句を口にしていた道明は何故か心の奥に罪悪感のようなものが浮かび上がってくるのを感じた。

何故だか、かなり悪い事を言ってしまったような気がする。

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