蛇足
2
「………?」
「?」
「……?」
「………………?」
そう、楓が顔を上げた先には、今までの楓の説明を全く理解できていませんとばかりに頭上にハテナマークを浮かべる、人相の悪い不良共が居た。
「(……こいつら全くわかってない………!!)」
特にリーダーである道本道長などは、理解出来無さ過ぎて、既に心此処にあらずといった感じだ。
しかも、道本の隣に居る金髪のフワフワした髪を持つ男からは「ヒントはー?」などと言う、この話し合いを根本から理解していないであろうという発言までかまし始めていた。
「(………これは)」
楓は頭を抱えながら、この蔦谷学園の生徒の頭の悪さを再確認すると、今までの「コイツらはバカだ」という考えを一気に改めた。
彼らの理解力レベルは“バカ”という抽象的な言葉で表されるべきではない。
具体的にいこうではないか。
彼らの理解力レベルは小学校低学年レベル。
3×5=15
掛け算とは「倍する」という事。
何故3×5は15なのか。
そんな事、真っ白な画用紙のような脳を持つ彼らに小難しい原理を教えてやっても絶対理解できない。
倍する、という事が何かなんて、わからなくてよい。
理由なんて知らなくてよい。
とりあえず、低学年の彼らには九九を全て覚えさせればよいのだ。
覚えて使っていくうちに理解していけばいい。
3×5=15だ。
理由など知らなくとも点数はとれる。
こうなる。
そうなる。
とりあえず、納得しろ。
「まぁ、とりあえず、イロイロ危険なので蛭池君と、彦星に1年をまとめさせて仲間にするっていう計画はやめておきましょうか!」
楓は爽やかに笑顔を作ってそう言うと、軽く説明を放棄した。
そんな楓に、男達はなんだか逆らえない、疑問を挟ませない空気を感じ取ると、皆コクコクと頷いた。
その様子に楓は、とりあえず此処に居る彼らは小学校に入ったばかりの猿レベルで会話を進めようと、意識を改めた。
そう、楓の目にはもう彼らは不良としては映っていない。
ましてや、ただの機能していない、役立たずの蔦谷学園生徒会執行部員達ですら無い。
彼らはサルだ。
楓はそう自分に言い聞かせると、今年で18になる人生の先輩を前に軽く泣きたい気持ちになったのであった。
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