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蛇足
楓会長の執行部講座
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「先輩、もう一度言います。集団をまとめるのに、まだよく知りもしない個人をあてにして頼るのは危険な事なんです。わかりますか」

「お、おう」


いつの間にか楓によって机に向かい合わせに座らされた道明は、その楓の勢いにおされ、戸惑いながら頷いた。

その道明の姿に呼応するように、周りに立っていた男達も道明を囲むように椅子を持ってきて座り込んでいた。

その目はどこか皆神剣さを帯びており、その目を向けられる先に居るのが何の変哲もない善良な一般市民たる楓という事実は、どうもおかしなモノであった。

そんな状況に、楓自身状況の不可思議さに苦笑を洩らしながらも、だからと言って止める気など一切なかった。

そう、楓の目にはもう彼らは不良としては映っていない。

楓の目の前に居るのは、ただの機能していない、役立たずの蔦谷学園生徒会執行部だった。


「こういう個人に頼った統治方法は単純で簡単な分、信頼関係の有無や、その個人の意志次第ですぐに崩れる可能性を孕んでいて非常に危険です」

「……おい、もっとわかりやすく言え」

楓の説明に道明は眉を潜めると、やはり偉そうな態度は崩さず楓に説明を促した。

「そうですね……。例えば、蛭池君と彦星二人が今ここで3年の皆さんに協力すると約束したとします。そうなれば1年生は全員ついてくる事になり、先輩達の狙ったような状況になります」

「……あぁ」

「しかし所詮はそんな約束は口約束に過ぎません。二人が3年の皆さんに従うのをやめてしまえば、その瞬間1年は全員が従うのをやめてしまうでしょう。何故なら1年という集団は先輩方の下に付いたのではなく、蛭池君という個人の下についてきた集団なんですから」

「…………」

「しかも、蛭池君と彦星と先輩方の間には裏切るという状況を躊躇わせる程の利害関係も信頼関係もありません。なので、こうなってしまう確率は低いとは言えない。それは2年生をまとめる場合も然りです。先輩方の考えでは全学年を統一するには軸が脆過ぎます」


そう一気にまくしたて、楓は達成感を胸に顔を上げると、すぐに後悔した。

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