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蛇足
多忙・多忙



楓は自らの過ごした1年間を振り返りながら、眉をしかめた。

生徒会長を務めた楓の1年間はすさまじく忙しいものであった。
正直、自分の事で悩む暇は片時もなかったのだ。

それこそ、楓は学校生活の改善・充実、各種の生徒会活動の企画・連絡調整などを一手に引き受け生徒達の生活を裏から支えまくっていた。

実際のところ、当初、楓は生徒会長になるつもりなど毛頭なかった。

自分がそんな器ではない事は理解していたし、だからと言ってそれを押してまで生徒会長になろうと言うやる気もチャレンジ精神も、楓は一切持って居なかったのだから。

だが、教師から一番成績が優秀だと言う事で生徒会選に出馬を命令され、後はあれよあれよという間に楓は生徒会長選でまさかの当選を果たしてしまっていた。

全国模試1位の称号は、やはり大きかった。

しかし、好きでなったわけではないとは言え、なってしまったからには仕事を放りだすわけにはいかない。

それに、元来世話好きな性格である楓には、様々な仕事を持ちこんでくる周りの生徒たちを放っておくことはできなかった。


故に、楓はこの今自分の目の前に居る男が軽々しく「生徒会執行部」と言う名前を口にするのに多少の苛立ちを感じざるを得なかった。


「(バカだ、バカだとは思っていたけど………まさか生徒会の仕事を履き違えるバカが、此処のトップとは……)」


生徒会は学校の雑用を一手に引き受ける裏方だ。

しかし、普段は生徒の誰からも感謝される事はない。

そんな……若干モチベーションの上がりにくい組織ではあるが。


……生徒会がなければ学校は…


「(学校はまともに運営できないんだよ………!!)」


楓は、俯いていた頭を一気に上げると道明へと視線を向けた。

これは、生徒会などではない。

こんな生徒会許されるわけがない。

………しかし、この男はこの組織を「生徒会執行部」と名付けた。

何も知らずに。

だったら、

生徒会執行部と名乗るからには………

「(生徒会執行部になってもらいますよ……絶対にね)」




楓はそう決意すると、密かに拳を握りしめた。

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あきゅろす。
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