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蛇足
強行突破
「コイツなら……俺に勉強を教えられるんだ!!頼むよ、母さん!!」

おいおいおい。
頼む相手が違うだろう。

楓はいきなり話の中心に駆り出された事に戸惑いつつ、密かによしきの言葉に眉を潜めた。

「ちょっと……よしき君。何勝手な事言ってんの?」

「母さん!頼むよ……!」

「……無視ですか?本人の言葉無視ですか?」

「んんー、そうねぇ」

「母さん!!」

「…………」

楓の決死の突っ込みも虚しく、よしきとよしえの会話は楓と言う当事者を無視し、つらつらと進んでいく。

「そうねぇ。でも。よしちゃんたら、すぐに家庭教師さんをクビしちゃうじゃない?お母さんそれはどうかと思うなぁ」

「今度はやめさせないよ!ちゃんと続けるよ!」

「……なにこの進研ゼミの漫画みたいなノリ」


俺はゼミかよ。


……ゼミの漫画ならこの後どうなるだろうか。

あぁ、そうさ。
わかってる。

ゼミの漫画ならこの後は確実に……

「もう、仕方がないわね……今度はちゃんと続けるのよ?」

「ありがとう!!母さん!!」

親は折れる。
こんな風に……。

楓は自分など完璧にスルーで進められていく話にめまいを感じ始めた。

「(あぁ……もう……どいつもこいつも勝手に……)」

この自分を全くスルーで話が勝手に進んでいく感覚は、どこか出会ったばかりの頃の彦星を彷彿とさせる。

「じゃあ、そういうわけだから楓ちゃん!花屋じゃなくて、これからはよしちゃんの家庭教師をお願いしていいかしら?いいわよね?楓ちゃんならきっとOKしてくれるわよね?ね?」

「尽力して俺に勉強を教えろよ?センセイ?」

穏やかに笑うよしえ。
どこまでも偉そうなよしき。

そしてどちらにも共通するのは……
有無を言わせぬその、その

態度。

「………………はい」

楓は己の意志薄弱さに涙が出そうになるのを必死に堪えると、苦笑いで喜ぶ親子を見つめた。

あぁ、俺。
また流された……。

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