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蛇足
即答
よしおが一人ほろ苦い思いをしている頃、楓は――


「さぁ、早く解けよ」


楓は何故か机に向かって数枚の問題に取り組まされていた。


「よしき君……やっぱり俺、店の仕事に戻りたいんだけど……よしえさん一人だと大変だろうし」

隣で鋭い目で楓を監視するよしきに、楓は走らせていたペンを止めると、小さくため息を吐いた。

いきなり、よしきに連れて来られたこの場所。

多分よしきの部屋なのだろうが、楓はそこで国、数、社、理、英、と5教科全ての問題を、よしきによって押し付けられた。

明林ならこの位の問題楽勝だろう

よしきの、その言葉はどこか有無を言わせぬ力があり楓は渋々店の仕事を放棄して問題を受け取った。

「客なんて一人も居ないんだから気にしなくていいよ。それに母さんに許しは貰ってんだからいいじゃん」

「でも……」

「はっ!やっぱ明林中ってのは嘘かよ!?」

ムキになって叫んでくるよしきに楓は疲れたような表情を浮かべると、仕方なく机の上にある問題に向き直った。

「さっさと解きなよね、明林の卒業生さん」

「……はいはい」


よしきはどうあっても楓が問題を解き終わるまで、解放する気はないらしい。

あぁ、もう

面倒な。

楓は店の仕事をほっぽりだして来たことがどうしても気になって仕方がなかった。

自分は給料を貰う為に此処に来ているのだ。

お金がなければ学費も食費も払えない。

バイトの時間は、少しも無駄にはしたくない。


楓は静かに息を吸うとザッと問題を見渡した。

問題のレベルは……

高い。


紀伊国屋を目指しているよしきだけあって、使っている問題集はどれも紀伊国屋の入試傾向に合った問題が使用されている。

というかよく見れば過去問もいくつか混じっているようだ。

これなら、


「(5教科合わせて……30分でいける)」

楓は最も答えの導きやすい英語に手を伸ばすと、


一気にペンを滑らせた。

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