蛇足
楓の見解
「ねぇ、あんたさぁ。うちの兄貴とどーゆー関係?パシリ?」
「友達だよ」
「あはは!そう思ってるの、あんただけだったりしてー」
「…………」
楓はうんざりしていた。
それはもう嫌という程。
原因は明らかに見てわかる。
よしきだ。
店を手伝うと言い出したよしきは、何故か常に楓の側から離れなかった。
そして常に楓に話しかけてきた。
こうしてよしきと10分程一緒に居て楓には一つだけわかった事があった。
よしきはよしお同様相当口が悪い。
しかも、質の悪い事に、よしおの場合誰に対しても口が悪いのと異なり、よしきのその対象となるのは彼が、自分より格下とみなした相手にだけだという事だ。
そして蔦屋学園に通う、しかも明らかにパンピーな楓は、もう彼の中で蔑みの対象として完璧にロックオンされてしまったようだ。
「(こういうタイプ……久し振りだな)」
楓は自分に付きまとっては、鼻につく自慢話をしてくるよしきに内心そんな事を思った。
楓が通っていた私立の中学は成績の上下競争が激しく、学力という括りで全てのランク付けが決定されていた。
そのせいか、そこでは自分より格下を見て安堵し、現在の自分を地位に甘んじる者が数多く存在した。
そう、今目の前に居るこのよしきのように。
常に学年でトップを独走していた楓は、そういった目で見られる事は一度もなかった。
だが、苦手だった。
格下だと相手を見下す成績上位者も
落ちこぼれだと卑屈になる成績下位者も
今思えば楓はあの学校の校風と人間には全く馴染めぬまま卒業して来てしまったような気がする。
そう、合っていたのは単に学力だけだった。
「(……不思議だなぁ)」
楓は自分の中学時代を思い返すと、どうしてもそう思わずにはいられなかった。
何だかんだ言って蔦屋学園に馴染んでしまっている自分。
全く種類の異なる……まぁ不良という人種の中に入り込んでしまったにも関わらず自分は約3ヶ月で蔦屋に馴染んでしまった。
一見同系統の集まる、あの中学には3年かけても馴染めなかったのに。
「(俺……蔦屋来て…よかったのかもな)」
親に見限られ
安定した将来の道は閉ざされてしまったが
得た物は、なかなかに
大きい。
楓は確かにそう思えだ。
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