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蛇足
いざカレー制作



そんなよしおに拒絶された。

楓は始めは、よしおが何か言ってきてくれる事を期待した。

いつものよしおならすぐに慌てたようにフォローの言葉を口にするハズだから。

しかし。

今、よしおは楓と目を合わせようとしない。

それどころか、楓の方を見ようともしなかった。

そんなよしおの態度に、楓は自分の体から血の気が引いていくのを感じる。

一歩、また一歩と背後へと後ずさる。

これ以上拒絶されたくない。

してほしくない。


楓は必死に平静を装おうとしたが無理だった。

ごめんと言う言葉が微かに震える。

顔が引きつって上手く笑えない。

心臓の音がやけに大きく聞こえる。


どうしよう


そう楓が混乱する頭で必死に考えていると突然背中が何かにぶつかった。

何かと思い楓が思わず振り返ると、そこには先程まで入り口に立ってこちらを見ていた蛭池の姿があった。


いつの間にこっちに来たんだ

楓が混乱していると蛭池はいつもの渋い重低音な声を楓へと声むけた。

「おい、楓。ここにカレーのルーが落ちてたんだが……一体なにしようとしてたんだ?」

そう言うと蛭池は楓の前に、先程よしおが落とした中辛のカレーを突き出してきた。

「……え…と、これは」

「それに何だよ。ニンジンやらジャガイモやら……お前ら今からカレーでも作るつもりだったのか?」

蛭池の呆れたような気色を含んだ声に楓はぎこちなく頷いた。


突然どうしたのだろうか蛭池のこの状況下での脈絡のない行動に楓はただ呆然と蛭池を見上げていた。

「そーなんだよ池ちゃん!俺ら今からカレー作ろうとしてたんだぜ!」

蛭池の隣では楓の足下に散らばった食材を拾い上げながら彦星が笑顔でそれに答えている。


何……?

一体どうしたんだよ
二人共

なんでこんなに…

普通に……


「カレーか……そりゃいいな。なんか今日起きてみたら飯が用意されてなかったから朝飯食ってねぇしな」

「オレも腹へったー!なぁ楓!早く一緒にカレー作ろうぜ!」

ニカッと笑う彦星の笑顔がやたら眩しい。

「俺もたまには一緒に作るとするか。なぁ、楓?」

蛭池も口元に薄く笑みを浮かべこっちを見ている。


そんな二人の姿に楓は先程までの混乱と動悸が少しずつ収まっていくのを感じた。

いつもの二人。

よしおから拒絶されても、そこにはいつもの玉泉院での二人が居た。


気にするな


二人の何気ない言葉と笑顔は暗に楓にそう言っているように楓には聞こえた。


「そう……だね。カレー作ろうか?みんなで」

楓が小さく笑って言うと、腕いっぱいに食材を抱えた彦星が満面の笑みで楓に駆け寄った。

「うん!」

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