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蛇足


『なぁ、お前らさ……あいつと喋った事あんのかよ?』

『別に……ねぇけど』

『アイツと喋る事なんか別にねーし』

『なら何でアイツががり勉オタクだってわかんだよ?』


見た目……だろうな。


楓はそう思うとキッチリと着こなした自分の制服に目を落とした。

『いや……だってよ見た感じ明らかにそんなんじゃねぇかよ?なぁ?』

『あぁ、マジで見るからに真面目で弱ぇ感じじゃねぇか。その癖なんかすかしてやがるしよ』

『俺らの事ぜってー馬鹿にしてるよな?あいつ』


俺が…すかしてる?


その言葉に楓はズキリと心が痛んだ。
すかしてるように見える態度。
それはただの楓の強がりだ。
強がっていなければ、
平気な振りをしなければ、この教室で自分は一人で立っていことすらできない。

こっちだって必死なのだ


そうぶちまけてやりたかった。

しかしそんな事が楓にできるわけもなく。

楓はただひたすら扉の前で、クラスメイト達の言葉に耳を傾けた。


『じゃあ聞くけどな、真面目ってのは悪い事なのかよ?あ?なぁ?』

『いや……別にわるかねぇけど……なんかそういうのムカつくっつーか』

『……あぁ。とりあえず……なんか気にくわねぇんだよ』


よしおの問いに上手い答えが見つからずクラスメイト達は、勢いのない声でボソボソと楓への理不尽な感情を吐露した。

結局楓に対して苛立ちを覚えたとしても、それには大した理由などないのだ。

ただ楓が余りにも自分達とは違う人種だから。

ただそれだけの理由なのだろう。

その事実に楓は、しだいに込み上げてくる悔しさにギリと奥歯を噛み締めた。

その時、教室から鼻で笑ったようなよしおの声が楓の耳に入ってきた。

『つーか、アイツが真面目?笑わせんな。アイツは大雑把な所はとことん大雑把な奴だぜ?』

『『『は?』』』

は?

クラスメイト達の反応と同様、扉の前で立ち尽くしていた楓も予想外なよしおの言葉に耳を疑った。

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あきゅろす。
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