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夢or現
(3)

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「っはぁ、ふ」


苦しげな声が和真の耳に静かに聞こえてきた。
その声に、和真は半分ぼーっとした頭のまま、ゆっくりと目を開いた。
しかし、どうした事か。
目をはっきり開こうにも、その目はいつものようにパチリと開かない。
どこか意識を半分どこかに置いてきたかのような、そのハッキリとしない意識の中で和真は必死に体を起こした。

そして、苦しげな声の正体をその目でぼんやりと捉える。

「……あそしえ?」

「っ!?」

カズマがぼんやりとした声で相手の名を呼ぶと、その相手、和真に背を向けていたアソシエの背中が大きく揺れた。
そして、恐る恐るアソシエの頭が和真の方へと向けられる。

「カ、カズマ…っ」

どこか泣きそうなその声に、和真はどうにも思い通りに動かない瞼と体を必死に動かしてアソシエの元まで体を動かした。
そんな和真にアソシエは慌てたようにガサガサと手を動かしている。

「カ、ズマ……こないで、くれ」

「……あそしえ」

真っ暗な部屋の中。
ぼんやりとした和真の視界の中でもハッキリと分かる程、アソシエの顔は酷く羞恥に塗れ真っ赤だった。
そして、和真はやっと理解した。アソシエが何をしていたのかを。

「カズマ……ごめ。見ないで、ほしい」

「……あそしえ」

見ないでくれ。
そう言って真っ赤な顔で俯いてしまったアソシエの手には、緩く立ち上がったままのアソシエのペニスがあった。

和真は自分がアソシエの自慰を目撃してしまった事に気付いた。
普段の和真ならば、ここでどんな顔をすればいいのか分からず、そして更には他人の自慰を見てしまった気まずさと罪悪感から顔を背けた事だろう。
しかし、今の和真はどこか常時のような感覚が抜け落ちていた。
どこかぼんやりとする意識は、寝起きのソレがいつまでたっての続いているような感覚だった。

意識も体も上手く反応しない。
そんな和真を動かしたのは、またしても召喚獣としての“本能”だった。

「あそしえ……くるしいのか?」

「……っ」

和真は苦しげなアソシエの表情に、自らも酷く苦しい気持ちになっている事に気付いた。
己の契約者が苦しんでいる。理由のない罪悪感に苛まれている。
その姿が和真にはどうしても耐えられなかった。

「ごめ、ん。カズマ……こんな、俺…、汚い。ごめん、ごめん。カズマ」

「……あそしえ、ちがう」

ごめん、ごめん。
汚くてごめん。
そう言ってどこか泣きそうに、切なげに告げられる謝罪に、和真はそっと重い体をアソシエの背中に預けた。
アソシエの肩に寄りかかり、和真はアソシエの足に手を這わせる。

「っひ、カ、カズマ。何を……」


アソシエは急に自らの体に触れた和真の暖かな体温に息を詰まらせた。
そして、その瞬間何故かそれまで反応の薄かった己の熱が一気に波打つのを聞いた。

「あそしえ、これはわるいことじゃない。みんな……やってる。きたなくない。ふつうだ」

「っぁ、っカ、ズマ」

「かのじょとか居ないと、自分で抜くしかない。居ても自分で抜くって友達も言ってた。ふつうだ。あたりまえだ。きたなくない。俺もする」

どこか舌足らずな和真の声は、アソシエの今まで関知しようのなかった深い部分を大きく刺激した。
寄りかかる和真の熱が、声が、アソシエの耳元にダイレクトに響く。

「あそしえは気持ちよくなっていいんだよ」

「っく、ぁ」

和真はそういって静かに微笑むと、足に這わせていた手をそのままアソシエのペニスに向けた。その瞬間、アソシエの体中の熱がそこに一極集中したかのように、ドクリドクリと鼓動した。そんな経験、アソシエには初めてで、ただただ短く息をする事しかできなかった。

「はぁっ、くっ」

熱い、熱くて仕方が無い。

「あそしえ、どこがきもちいい?ほんとはもっと濡れてたほうがいい。なんかろーしょんとかないかな」

言いながら和真はひたすらアソシエの熱を手の中で感じた。自分だったらどこが気持ちいか。どう触ってもらいたいか。そんな事を考えながら、和真は必死に先端を指で刺激したり、裏筋にゆっくり爪を立てたり、玉を揉みしだいたりした。
とにかく、アソシエを罪悪感やら苦しさから解放したかった。
ただ、気持ち良いと、自慰を当たり前のように受け入れて欲しかった。

「ひっ、ぁ、っくぁ……カズマぁ」

切ない声が和真の耳にこだまする。
苦しそうな声ではなく、それは間違いなく快楽に濡れた声だ。
それを証明するように、アソシエのペニスは最初では考えられない程熱く、そして大きく天井を向いていた。

そんな自身に、アソシエですら混乱していた。
こんな感覚初めてだった。背筋がぞくぞくするような、それでいて何か強い衝動に駆られるような。
そして、とにかく和真の熱と、声と、手は気持ちが良かった。
気持ちが良くて仕方がなかった。

「ちょっと濡れてきた……でも、もっと他に何か」

和真は熱にうかされるようなアソシエの汗の滲んだ額に思わず頬を寄せると、ハタと思いついた。
意識は未だにぼんやりしており、体は上手く動かないが、ただ和真はアソシエがもっと気持ちよくなるにはどうしたら良いかという思考だけは鈍らなかった。

アソシエに頬ずりする和真は小さく呟いた。

「なめたらもっとぬれる」

「っ!!??」

その言葉に息を呑んだのは他でもないアソシエだった。
今の今までこの異様な状況に流されていたが、まさか和真が自分のモノを咥えるなどもっての他である。
こんな汚いモノ、浅ましい自分のモノなど、こうして触れられるだけれも本当はいけない事なのだ。
止めさせなければ、今の和真ならば本当にやりかねない。
そう、アソシエは思った。

思った筈なのに。

「おおきい、うらやましい」

そう言って既に自らの足の間に顔を持っていき、至近距離から自らのペニスを見、そして和真の口から漏れる吐息に、アソシエは何も言えなかった。
止めなければ、止めなければ、止めなければ。
頭の中はそれでいっぱいな筈なのに、それに反対するかのようにアソシエは和真の頭をそっと自らの手で触れて、急かすように押した。

その瞬間、和真は一瞬へらりと嬉しそうに笑うと、そのままパクリとアソシエのペニスを咥えた。

「っぁあ、うあっ、んあ、っひう」

「ふぁん、ふ、くっんん」

頭上から漏れるアソシエの抑えきれない喘ぎ声に和真はぼんやりとする意識の中で歓喜していた。
あんなに苦しそうだったアソシエが今ではこんなに気持ちちよさそうだ。
自慰なんていう、男だったら誰もが当たり前にする事にすら、アソシエは罪悪感を感じて自分を苦しめる。
そんな必要一切ないのに。

和真がアソシエのモノを咥えようとした時、急かすような、どこかオスの本能のような目で和真を見下ろしていたあの時の顔を見て、和真はホッとした。
嬉しかった。
キモチイイ事を悪い事など思わず、存分に享受すればいい。

契約者の快楽は、召喚獣の快楽だ。

「カズマ、カズマ、カズマ、カズマ、カズ、マ」

そう、必死に和真の名を呼ぶアソシエに答えるように、和真は必死でアソシエの熱を咥え、舐め、そして刺激した。
フェラなど初めてだったが、和真はアソシエを気持ちよすくる事に一生懸命だった。
多分、どこかで自分には時間がない事を分かっていたのだろ。
アソシエのドクリと波打つペニスの先端に舌をねじ込み、玉に手を這わせ揉みしだき、頭を動かした。
くちゅり、ぐちゅ、はふ、ひ、はぁっ。
咥えながら必死に呼吸をして、必死に自らの舌をアソシエの熱に絡ませる。
いつの間にか和真の目から生理的な涙が次々と流れてきていたが、そんなのかまっていられない。

時間が無い。
もう、和真はそこまで意識を手放しかけていた。

そんな、次の瞬間。
今までにないくらいアソシエのペニスが大きく高鳴った。

「っく、ふ」
「んんんっ!」

和真の口内にドロリとした苦い何かが広がっていく。
和真は思わずそれを呑み下し、そして酸素を求めるようにアソシエのペニスから口を離した。

「はぁっ、はぁっ、はぁ」
「か、ずま」

息絶え絶えになりながら、遠のく意識を必死に保ちながら和真はアソシエを見上げた。
それと同時に、ツンとした口内に広がったあの熱の残滓が和真の目の前に飛び散った。
ドロリとした白いモノが和真の頬や、瞼を濡らす。
その瞬間、和真は顔についたものがアソシエの精液だとわかった。

それをアソシエはどこか信じられないような表情で見下ろしていた。
和真の口からアソシエの熱が離れた瞬間、アソシエはまだ体の奥に残る熱の塊を放出させるように和真の顔にかけたのだ。

そう、わざと、アソシエは和真に向かって熱を吐きだしたのだ。
こんな汚いモノ、浅ましいモノ。と、思っていながら、アソシエは和真を汚してみたいとも思っていた。
思ってしまった。
必死に自らのモノを咥える契約者の姿に、アソシエは生まれて初めて理性では抑えきれない“欲情”を覚えてしまった。
理性なんてタガを遥かに凌駕する程の、それは激しい衝動だった。

「ぁ、あ、あ、……カズマ、あ、ご、ごめんな、さ」

自身に眠る、どうしようもない程の欲望の衝動にアソシエは震えた。
思わず涙を流してしまう程に、アソシエは白い液体で顔を汚してぼんやりと自分を見上げて来る和真に、ひたすら泣いた。
そんなアソシエに和真はやれやれと内心溜息をつきながら、最後の力を振り絞った。

「あそしえ」
「っ」

和真は正面からアソシエに抱きつくと、もう力の入らない自らの体重をアソシエに預けた。
預けたところで和真よりも大きく鍛えられたアソシエの体はビクともしない。
和真はアソシエの背中に手を回すと、アソシエの耳元でそっと呟いた。

「ありがと。おれも、きもちよかった」

そう呟いた瞬間、アソシエの体が揺れ、それと同時に和真の意識はプツリと途切れた。
アソシエは力なく自分に預けられたその体を、思わずしっかり抱きしめると、ボロボロと流れ続ける涙に鼻をすすった。

「カズマ、カズマ、カズマ……俺も、気持よかったっ……」

和真の体をひたすら抱きしめながら泣き続けるアソシエは数分後。

自分とカズマの間で、またしても元気を取り戻した自らの熱に「うーうー」と唸りながら鼻水を流した。
二度目の熱を彼がどうやって解放したかは、それは意識を失った和真の知るところではない。




「カズマぁ、ごめん、ひっぐ」





ただ、和真の両手はひたすらに白い液体でぬれそぼっていた。

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あきゅろす。
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