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御免こうむります
一足先に、激闘争(逃走)



『ばけものが!』
『ばけものめ!』
『おいだしてやる!』

先程までここでゴミを漁っていた猫達が、一斉にぼすの背後から現れた。
いや、3匹だけならまだよかった。

ぼすの後ろからは、どっから沸いて出たと言わんばかりの数の猫達が全員で俺を睨みつけている。

『え?えええ?』

『っはっはー!驚いたか!?こいつらは俺の子分だ!俺の言う事ならなんでも聞く可愛い奴らだよ!』

本来、猫は集団行動なんてしない。
けれど、絶対ではない。

今、俺は目の前でこの地区の暗黙の了解を破り、あまつさえ猫の頂点に君臨した、ぼすの姿に眩暈を起こしそうだった。

いやいやいや。
あの綿毛のように小さかった猫が。
確かに大物になるだろうとは思っていたが。

まさか、俺のご飯を脅かす、こんな猫至上最悪なトップになってしまうとは。

こんなデタラメな数相手に俺が敵うわけがない。
ぼす一人だって勝てるか怪しかったのに。

俺は一瞬にして戦闘体制を解くと、“逃げ”の体制に移った。

逃げの一瞬を失えば、俺は本当にやられてしまう。
俺がそう悟ったのと、ボスが俺の逃げ道をふさごうと声を上げたのは同時だった。


『テメェら!アイツをやっちまえ!!』


そう、ボスが叫んだ瞬間、激しい轟音が俺達の後ろの方から響き渡った。

ガシャァァン

それは何が壊れる音。
その一瞬が俺を救った。

ぼすの掛け声で俺に飛びかかろうとしていた猫達は、その音で一瞬の隙を作った。
ぼすもそうだ。

俺は猫達の猫達の間を勢いよく駆け抜けると、路地の奥へと走る。
奥は、先程大きな音のした方だが、そんな事かまっていられない。

確かこの奥は表通りへと繋がる穴が開いていた筈だ。
そこから逃げ切れれば俺の勝ちだ。

しかし、ぼす達だって俺が逃げたのを黙って見逃してくれるわけではない。
既に背後からはぼすを筆頭にたくさんの猫が俺を追いかけてきている。

今日で二度目となるぼすとの追いかけっこ。

しかし、こんな分の悪い、絶望的な追いかけっこは初めてだ。
溜息を吐く余裕もない。

そう、俺が前だけを見て走っていると、俺の目的とする裏路地の一番奥。
なにやら奥から人間の話し声が聞こえる。
しかも複数だ。もしかしたら逃げ切らずとも助かるかもしれない。

野良ネコは人間には近づかないから。
そう、俺は一縷の望みをかけて開けたその空間に飛び出した。


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あきゅろす。
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