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御免こうむります
一足先に、猫としろ(2)


「今何時だー?」

「にゃあ」

俺はしろの頭の上の方にある四角いものを口にくわえて白の目の前に持ってきてやった。
こうすると彼の問う“今何時”の答えになると、俺は知っているのだ。

「ありがとな……キジトラ」

「にゃあ」

しろは俺に人間と話すように話しかけてくる。
だから俺はしろが好きだった。

しろと居ると、俺は自分が人間になったような気になって嬉しくなるからだ。

「11時か……がっこ今日も休むか」

「にー」

「行った方がいいか?」

わからん。

そんな事、俺に聞かれても。俺はその意を伝える為に首をかしげてやる。
わかりませんという意味になる事を俺は知っているからだ。

「わかんねぇか、じゃあ休む」

「にゃああ」

「なんだ?嬉しいのか」

「にゃああ、にゃああ」

どうやら今日は“学校”とやらには行かないらしい。
俺はどちらかと言えばしろには学校へは行って欲しくない。

俺が暇になってしまうというのもあるが、しろが他の人間の若者と同じような格好をして外に出てしまうと、しろはどんなに俺が話しかけても無視をする。

いつもは自分から話しかけてくるのに、外に出ると俺の事なんて知りませんという風に、俺の事を見ようともしない。

しろにそんな風に扱われると、やはり自分は人間ではなく猫なんだと思い知らされるようで腹の毛がきゅうとなってしまう。

まぁ、確かに俺は猫ではあるのだから別に問題は何もないのだが。
でも、腹の毛がきゅうとなる感覚はあまり好ましくない。

だから、俺はどちらかと言えばしろにはこの家に居て俺と人間がするように話しかけて欲しい。

しろはのそのそと部屋から出ると先程俺が駆けあがって来た階段を下りて行く。

俺もしろに続いて階段を下りる。顔を上げると「くぁ」としろが眠そうに欠伸をしていた。そんなしろを見ていたら俺も眠くないのに自然と欠伸が出て来た。

「なんだ、お前にも欠伸が移っちまったか」

「にー」

初めて知った。

どうやら欠伸というやつは移るものらしい。
俺はしろの顔を見上げて大きく口を開くと、小さく笑うしろの足にすり寄った。


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あきゅろす。
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