つまりは、明日からまた1週間が始まるということ。
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その瞬間、和真は宙を舞った。
いや、“舞っていた”。
(騒がしいな。もう……朝か?)
和真は妙な浮遊感に薄く目を開いた。
遠くから何か声が聞こえる気がする。
気がする、と思った瞬間、和真の体は一気に急降下した。
目がパチリと覚める。
覚めた瞬間下っ腹にぞくりと嫌な感覚が走る。
それは、落下特有のぞわりとした感覚。
それ以外になかった。
ちなみに、和真は結構重症な……高所恐怖症であった。
「うぁぁぁぁ!」
「えっ!?」
叫ぶ俺と同様に、俺は地面に体が叩きつけられる瞬間驚愕に満ちた男の声を聞いた。
それと同時に、和真は体全体に鈍い痛みが走るのを感じた。
所以、落下して地面に叩きつけられたのだから、その痛みは相当なものだといってよかった。
「っててて、し……しぬ、いだい……!」
和真は意味もわからず襲ってきた痛みにゴロゴロと痛みを分散させるように床を転げ回った。じわじわと襲ってくる痛みはいくら転げまわっても「フーフー」と必死に息を吐いても分散されない。
だから和真は気付かなかった。
和真が地面に落下する瞬間聞いた声の主が、和真の真横に立っている事に。
「先輩……これは……」
「……こいつ、何属性だ?お前、何属性と契約結ぼうとした?」
「風の筈です」
「こいつ、風か?」
「……違います、よね?」
和真の頭の上で、何やらよくわからない会話が繰り広げられている。
和真は少しばかり痛覚から解放され始めた頭で、その会話の主に目をやった。
微かに残る痛みの先に見えるのは、何やら見慣れぬキッチリとした紺色の制服のようなものを着た男二人だった。
ただ、どうにもこうにも話している男二人が明らかに日本人には見えない。
二人とも帽子の下から微かに見える髪の毛は、染めたものとは程遠い見事な金色だった。
加えて、目の色が一人はスカイブルー、もう一人は色素の薄い茶色。
明らかに日本人の風貌からはかけ離れている。
「でも、どちらにせよ……これがお前の呼んだ契約者たる護衛兵なら、試験は成功って事になるが……マジでコイツ、何属性だよ?」
「わかりません……けど」
そう言って、一人のスカイブルーの目を持った男が横たわる和真の上にズイと顔を突き出してきた。
突然目の前に広がる澄んだ青い目に、和真は息を呑む。
先程までの痛みに息を呑んだ感覚とは、また全く違った、でもどこか胸の苦しいような感覚だった。
(……な、んなんだ……こいつ)
「キミが、俺の契約者なんだね。俺は……本当に魔力があったんだ……」
「……っ」
どこか泣きそうな程に、嬉しそうな表情でほほ笑む男に和真はただどうしようもなく目を瞬かせるしかなかった。
こんなに近くに他者を感じた事はない。
それも、こんなに嬉しそうに自分の存在を見つめられた事もない。
ただ、それは例えるなら赤子が産まれた瞬間に母親が見せる表情と同じであるような気がした。そんな表情、間近で見たことも、自分が生まれた瞬間の事を覚えているわけではないが、この自分の存在を1から10まで全て許し、受け入れるような目は、生まれたてのわが子を見るソレと同じである。
目の前の男の突然の慈愛に満ちた表情に、和真が戸惑っているとスカイブルーの瞳の男は和真の左手を見つめるとハッとしたように、和真の手を取った。
「先輩!見てください!」
「ん?」
和真は横たわったまま勝手に自分の左手を持ち上げられ、勝手に「見てください!」と興奮気味に言われる自分の左手を見た。
そこには、まさかの信じられないものがあった。
「色がねぇ……だと?」
「けど、やっぱり俺が呼んだんだ!俺が呼んだんです!誓いの指輪がきちんとある!」
誓いの指輪。
そう、スカイブルーの男から称されたモノ。
和真の左手の薬指には透き通った透明の石のついた指輪が、しっかりと嵌められていた。
その石の色が透明だとか、いやに嬉しそうなスカイブルーの瞳を持った青年だとか、訝しげに俺を見下ろす先輩と呼ばれる男とか。
もう全てが和真には理解できなかったし、ついていけなかった。
ただ、それら全てを凌駕する勢いで信じられない事実があった。
それは。
(つーか、俺)
「なんで、裸……?」
ぽつりと呟かれた俺の間抜けな一言とすっぽんぽんの自分の体。
まさに、生まれたままの姿。
それはもう、明日会社に行きたくないとか、上司との出張嫌だとか。
もろもろを全て忘れさせるには十分な事態であった。
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