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未知との
2.お暑いです
大岐男子高等学校
2年3組



時は7月。

日に日に威力を増していく太陽の光に人々が体を蝕まれる中、それは不良校のトップである彼にも容赦なく襲いかかっていた。

「団地さーん!今日は大河のヤツらん所に乗り込みにいきましょーよ!」

「………………」

「いや!今日は嬢嶋のヤツらん所っしょ?!」

「………………」

「どっちもダブルで潰しにかかるってのはどーっすか?!」

「………………」

「そーだな!団地さんならここら一帯を大岐で平定すんのもそう難しい事じゃねーよな?!」

「……………」

「「「団地さんどーします?!」」」








「帰る」










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団地がフラフラと歩き去って行った教室では団地を囲んでいたカラフルな頭をした男達が呆然と立ち尽くしていた。

「……帰っちまったな団地さん」

「久しぶりだったのにな……学校にくんの」

「一週間ぶりか?」

「多分そんくらいだよな」

「今日はいぐささんも来てねぇしな」

「道本さんなんか2週間前に嬢嶋とヤった時から来てねぇし」

「あの人今度は背中痛めてたよな」

「ありゃ相当ヤバかったもんな」

「1年のアクアスも昼には帰ってたし…」

「チームの主要メンバーいなきゃ盛りあがらねぇしな」

「つーか団地さん5月頃からあんましどことの喧嘩にも乗る気じゃなくなったよな」

「すぐ帰るし」

「最近なんてあんま学校こねぇし」

「まぁ……暑いからな」

「けど団地さんかっこいいよな」

「あぁ、あのダルそうな感じが更にかっこいい」

「けどそれが喧嘩になると人が変わったように生き生きすんだよな。マジかっけー」

「1年なんか最初の大河戦の時の団地さん見ただけで全員団地さんのファン化したもんな」

「マジ団地さんスゲェよ」

「団地さんは男が男に惚れるお人だからな」

「ただすげーめんどくさがりだけどな」

「また団地さんのケンカ見てぇよ」

「「「「はぁ」」」」

カラフルな男達は深く溜め息をついた。



大岐高校は今日もリーダー不在です。











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「(クソあちぃな……ったく)」



団地はフラフラとした足取りで学校を出ると、死んだような顔で太陽の熱を照り返す道路を歩いた。


「(つーか、あいつらいちいち俺の周りに群らがりやがって……あちぃったらねーな)」


団地は額からとめどなく流れる汗を手でぬぐいながら思った。

先程、団地の回りに集まっていた男達。
それは全員、団地がトップを勤めるチームの者達であった。

チームといっても、それは大岐高校の殆どの生徒が(勝手に)団地の下に集まって出来たものであるため
学校=チーム
という定義がここでは成り立っている。

そしてそんな団地率いる大岐高校は今日、祭り並の勢いで全校生徒が盛り上がっていた。

理由は簡単。

ここ1週間全く学校に来ていなかった団地が久しぶりに学校に来たのだ。

ただそれだけ。

しかし、その事実は全校生徒を一気に湧かせた。

団地が来たという情報はすぐさま学校中に広がり、それを聞きつけたチームのメンバー達(団地のファン達)は一斉に団地のもとへと走った。

それから後は、冒頭のあの提案攻めがひたすら団地になされていたのである。


「(やっぱこんな暑い中、学校なんか行くんじゃなかったぜ……めんどくせぇし)」


団地は先程の教室で自分を取り囲む男達の光景を思い出しながら、うんざりとした顔をした。
基本、団地という男は頑張る事や面倒な事は全て避けて通る男である。

そんな彼が、もともとあまり意味を見いだせていない高校という場所に暑さを押してまで来る事など有り得ない事であった。
しかし、だからといって団地は毎日家に引きこもっていたわけではなかった。

自分の部屋にクーラーという文明の利器がない団地は最近、1日の殆どの時間を玉泉院で過ごしていた。
だが余りにも毎日現れる団地に玉泉院の店長、安本は今朝玉泉院の扉をくぐった団地に対し


『学校に行け。この学費浪費野郎が』


と言うや否や、頑として動かない団地を無理やり店の外へつまみ出し学校へと向かわせたのだ。


「(くそ店長が。)」


内心悪態をつきながら団地がケータイを見るとそこには3時30分という時間が表示されていた。
団地はそれを見てホッとするとケータイをポケットへと戻し、歩く足を早めた。

この時間なら安本も何も言うことはあるまい。

団地は涼しさを求めて太陽と戦いながら玉泉院へと歩を進めた。


「(この時間なら……アイツも居るかもな)」



密かにそんな事を考えながら

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あきゅろす。
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