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未知との
3.呼出
「……………」

「くそっ!俺は嘘つかれたのが一番許せねぇんだよ!!!」

「まぁ、いいじゃないか。留年は免れたんだし」

「そうですよ、先輩。あの男に今回は感謝すべきですって」

安本は未だにプルプルと拳を震わせ続ける道本を宥めるように声をかける。

しかし道本は完全にへそを曲げたらしく、フイと眉間にシワを寄せてテレビへと視線を移した。

安本はそんな道本の姿にフゥと息をつくと、チラリと視線を脇にはずした。

そこには先程までせっせと宿題に鉛筆を走らせていた咲が、全ての荷物をリュックへとしまう姿がある。

「お、咲。もう宿題は終わりか?随分早かったな」

「………今日は…もうしない」

咲が荷物をリュックに詰めながら無表情で呟くと、テレビに目を向けていた道本がチラリと咲に目を向けた。

「お前なぁ、そんなんずっと先延ばしにしてるから宿題っつーのは溜まるんだよ!こないだまでの俺らを見習えよ。なぁ団地!」

何やら偉そうな態度で言ってくる道本に咲はピタリと動きを止めた。

何やら釈然としない気持ちが漫然と咲の心に掬っている。

この気持ちに名前をつけるなら何というだろうか。

咲は無表情なまま夏休みの宿題をもつ手に力を込める。

………名前、

そう、今の気持ちを言葉に表すなら


腹が立つ


そんなところだろう。


咲が黙っていると、隣に座っていた団地は少しだけ目を細めて咲を見下ろした。

カウンターには小さな鉛筆の芯が数個転がっている。

「……………」

未だに動きが止まったままの咲に団地は、ポンポンと咲の頭を撫でてやった。

咲が無表情のまま顔を上げると団地はいつもの不機嫌そうな表情で咲を見つめていた。

「自分のペースでやればいい……あと次からは鉛筆じゃなくてシャーペンにしとけ」

団地の言葉に咲は大きく頷くと、またいそいそとリュックに荷物を詰め出した。

そんな咲を横目に、団地は「咲は31日に宿題焦ってやるタイプだな」などと得意気に分析している道本の頭を思い切り殴ってやった。


「(団地君は優しい)」

咲は頭を撫でられた感触を思い出しながら少しだけ、ほっこりした気分になっていると、リュックの中で光るあるものを見つけた。

咲は一瞬にして目を見開くと光るものに手を伸ばす。

それはつい最近機種変したばかりのケータイであった。

「(……誰だろう……お母さん?)」

咲はケータイを取り出すと通話ボタンを押そうとケータイを開こうとした。

「っでぇぇぇ!いきなり何しやがんだよ?!団地ぃぃ!」

「うるせぇ……黙れ」

隣でギャーギャーと騒ぐ団地と道本に咲は目を細めるとケータイをスカートのポケットへとしまった。

そしてポテっとカウンターの椅子から降りると、店の奥にあるトイレへと走る。

「最近てめぇ俺の事殴り過ぎだっつーの!テメェも一発殴らせろ!」

「……やれるもんならやってみろ」


背後からはやはり団地と道本が言い争う声が絶えず聞こえてくる。

「(静かなところ……静かなところ)」


咲は急いでトイレに駆け込むと急いでケータイに手をかけた。

きっと母親に違いない。

もしくは牟田だろうか。

そんな予想のもと咲はカパリとケータイを開いた。

しかし

ケータイに映し出されていた名前は咲の予想を遙に越える人物だった。




山ノ井想

ケータイ画面には確かにそう映し出されていた。

その名前に咲は目の前が真っ白になった。

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あきゅろす。
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