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「……ねえ、どうして部長は、俺と同じだけ俺を愛してはくれないの……?」
涙で濡れた自分を見せるのは恥ずかしかったけど、そこから動かず何も言わなくなった彼に、戸惑って顔を上げる。
「……ぶちょう?」
すると、酷く切な気に微笑む彼と目が合った。
「……すまないな、越前。 まさかお前がそんなことを思っていたなんて気付きもしなかった」
すこし遠慮がちに俺の涙を人差し指でそっと拭ってくれる。
その指先は酷く温かくて優しかった。
俺は瞳を閉じてその優しさに酔う。
「俺だって、お前を愛している。 それこそお前が俺を好きになる前から、俺はお前に惹かれていたのだからな」
思いもよらい言葉を聞いて、驚いて瞳を開ける。
けれど、それは彼の大きな掌で妨げられた。
「もう少し、瞳を閉じたまま話を聞いていてくれ」
それが少しごもごもした感じに聞き取れて、まさかと思う。
「……部長、もしかして照れてる?」
聞かずにはいられなくて言葉にしてしまうと、俺の瞳を覆う大きな温かい掌がピクッ、と動いた。
「……うるさい」
照れ隠しに怒った口調になった彼に、思わず笑ってしまいそうになる。
だって、まさか部長にこんな一面があったなんて誰が想像できただろうね。
それが嬉しくて静かに彼に従った。
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