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紅桜に成って似蔵さんを救うお話
目的決定
「とりあえず、現状整理するか」

1、気づいたら体も視界も動かないよくわかんない状態。目の前には男の死体。似蔵さんの顔が目の前にあった。金属音の後、目の前が暗くなって気を失ってた。

2、よくわかんない真っ暗な空間に居た。なんかピンクのよくわかんない奴が居た。金属音の後また意識が無くなった。

3、また体も視界も動かない1の時と同じような状況に置かれる。視界は動いた。男の死体あった。また金属音の後に目の前が暗くなって気を失ってた。

4、今度は真っ白の空間にいて、似蔵さんたちの話し声が聞こえる。似蔵さんの動きが揺れとして伝わってる。

「ん〜こんなことがありましたね……後、似蔵さんに紅桜って話しかけられたしな……」

似蔵さんの歩く振動を感じながら思考を纏める。

「これは、自分が紅桜に成ったって解釈でいいかな。白だの黒だのの空間と現実世界の行来は、紅桜を鞘から抜くか仕舞うかって感じで切り替えられるのかな……てことは今は紅桜は仕舞われてるってこと。」

こんな推測、現実離れしていることなど百も承知である。

「自分、紅桜に成ったんだなぁ……」

しかし、現状を整理するとそう考えられるのだ。
手を握れば爪が掌に食い込む感覚。頬に限らず肉を抓れば痛い。
五感も意識も明瞭でこれは現実だと教えてくる。

正直な所を言えば、彼女。
この手の妄想は経験済みであったりする。
自分が紅桜に成り、似蔵の右腕に成る。
だからこそここまで素直に胸に落ちてくるのだ。
高凸無形な話ではあろう。

しかし、これを彼女が現実と認めれば話は早かった。

内心彼女は嬉しくて嬉しくて仕方がない。
現実から切り離され訳も分からず漫画の中に組み込まれ、死体に血と言った今まで無縁だった生臭い光景を見せられた。
そんな最悪としか言えない状況のはずであるが、彼女はきゃっきゃと心が騒いで止まない。

妄想、想像力ばかりが日々の中で鍛えられているため、己の今後というのは安易に予想できる。
紅桜といった刀になったということは、凶器になった、人を殺す道具となってしまったということで。
一番最初の目を覚ましたときの身を襲った衝撃は、恐らく人の身を己の刃が斬り滑ったときので、目の前の男の死体は実質、自身が作り出したのだ。
それがきっとこれからは、もっとハッキリとした意識と感覚の下で行われる。
己が人を殺す未来はそう遠くない。
平和で生温い世界で育ってきた彼女にしてみれば顔面蒼白ものだろう。
常人であれば己の身が人間の皮膚を割り、肉を断ち骨を滑る感覚など、身が竦み血が凍りそうである。

しかし、そのような未来が見えたとしても彼女はそうはならない。
彼女はむしろ自分が紅桜であれることに最高の至福を感じている。
それはきっと以前から彼女が似蔵に対して、依存とも言える重く重く重い愛を持っているからで。
似蔵の一部とも言える紅桜に成れるのだ。
どこに絶望嫌悪する要素があるというのだろうか。
そんな様子だ。

そもそも人斬りである似蔵に心酔している時点でおかしいのだ。
確かに漫画といった別次元の住人であれば人斬りであろうが人間的に屑であろうと、キャラクター的に読者のハートを掴んでいれば人気というのは自然と出る。
しかし、実際彼女が生きていて存在している、彼女の現実に似蔵は存在しているのだ。変わらない人斬りとして。
まだ、面と向かって会話もしていなければ触れ合ったわけでもない。
まだどこか非現実的なフィルターで似蔵を見ているのかもしれない。
だとしてもここが現実だと認めたこの世界で。
人を斬り裂いた感覚が色濃く感覚として残る今現在で。
尚、彼女は似蔵を見る目を変えない。
似蔵への愛は変らない。

これから一体どうしたいのか

そう問われれば彼女はきっと満面の笑みでこう答えるだろう。

「似蔵さんを救う!!!!」

きっと彼女は寝ても覚めても成り代わってもトリップうしても、きっと変わらず似蔵を推すのだろう。

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