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紅桜に成って似蔵さんを救うお話
意識の暗転多くない?
ドサッという音を皮切りに意識がはっきりする。
目に映ったのはうんざりするほどの暗闇ではなく、淡く紅色に照らされて倒れこむ人間の姿。

(わぁお……)

和服に包まれたその体は一部が暗くテラテラと輝いていた。
それが血だと気づくのに時間はかからない。

(なんか、デジャビュ……。)

ついさっきも同じ光景が目の前で起こった。
試しに身体を動かしてみようとしたが、やはり動かない。視界も男を捉えたまま変わらない。

(またか……。)

彼女は声を落胆としているが、それと同時に期待もあった。

視界が高くなり身体が持ち上げられる様な感覚。
持ち上げられる際に見えた緑色。

それだけで彼女は似蔵の存在を確信する。

その後直ぐ、勢いよく上から下に振るわれた。
勢いよく風が表面を撫でていく感覚と、地面に液体が叩きつけられる音が聞こえた。

衝撃が治まれば視界はさっきと同じように戻った。

(これって……もしかして自分、紅桜になってたりする?)

何故そう思ったかと言えば完全なる直感と自分の妄想で紅桜に成り代わるというシナリオを想い描いていたからだ。

そう考えて周りを意識して、空気に触れる体の線をなぞってみる。
水平に平行に狭い間隔で細長い身体。
先の方は流暢な曲線を描いて二本の線は合流している。

(the刀って感じのフォルムやな……)

感覚の上の方では暖かな物に握られている感触。

(これって、似蔵さんの、手……!?)

似蔵が、推しが今すぐ近くに居る。
何故かは分からないが直ぐ後ろに横に居る。
後ろを振り向きたい。視線を動かしたい。似蔵を見たい。
そんな一心の思いでギリギリと望んでいると、つっかえが外れたかのように視線がぐるりと回る。
視界に飛び込んできたのは緑だ。
ひらりと揺れ動く緑の隙間から黒が見え隠れする。
上へと視線をずらせば茶色の帯が。視界のはっじこには、腕だろうか肌色も見える。

そのまま視線を上に上にとずらしていけば、

(に、……に、にぞおぉおぉおおさぁあぁあんんんんん!!!!!)

確かに岡田似蔵が居た。
皺の刻まれた眉間に太めの眉。あげられた髪が数房の解れており、かけられた色眼鏡の奥には閉じられた瞼が睫毛と共に影を垂らしている。

(おぉおおぉおおおおおおおおおおぉおお!!!これマジでヤバイってこんあんんすあうjdじぇいkさあkeueiehqlmb%nlskz@)

興奮で言語を忘れた彼女はさておき、似蔵は斬り伏せた男の方を見て口角をあげている。

手にしている刀。紅桜で斬り捨てた人間が最期に放つ魂は淡く紅色を帯びて一回りも美しく見える。

手に持つ紅桜が妙に震える。

「あんたも嬉しいのかねぇ……」

(めっちゃ嬉しいですっ!てかマジでかやばいってまじでっjうぃあいksiwi=3kwji)

紅桜が震えている本当の理由など、知る由もない似蔵は昇り逝く魂を見届けると歩み出す。

「今日はこれぐらいにしとくかねぇ」

そう言って鞘にと刀を仕舞うと、耳にカチンっと音を残して彼女の意識は沈んでいった。

そのまま似蔵は殺した男を一瞥する様子もなく浮かれた気分で夜闇を歩く。



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あきゅろす。
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