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嶺ねーさんからのドキワク兎虎プレゼント
水滴の滴る髪をタオルでガシガシと乾かしながら虎徹は冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。
リビングに足を踏み入れながらプルトップに指をかけたところで自宅の呼び出し音が響いた。

情事を終えて今しがた出て行ったはずの親友が戻ってきたのだろうか?
虎徹は確認もせずに勢いのまま玄関のセキュリティ・ロックを外した。

「アントニオ?何だよ、忘れも…の…っ!?」

開いたドアの前に立っていたのは薄闇に浮かぶ金色の巻き毛と眼鏡の奥で光るグリーンアイ。
見慣れた相棒の予期せぬ登場に、虎徹は驚きの表情を隠せなかった。

「バニー…ちゃん?」

「全く貴方は…不用心にも程があります。もし僕が強盗だったらどうするんです? そんな格好で立ち回りするつもりですか?」

バーナビーは腰にバスタオルを巻いて片手に缶ビールを握る虎徹をため息交じりに眺める。

「うっ…うるせぇやい!風呂上りだったんだから、しょうがねぇじゃねえか!」       
虎徹は狼狽えながら言い訳にもならない台詞を吐く。
取りあえずその場をしのごうと、頭に過ぎった疑問を口にした。

「バニーちゃんこそ、こんな時間にどうしたってんだ?」

「貴方はいつも突然うちに押し掛けるじゃないですか。それとも僕が来たら迷惑でしたか?」

「別に迷惑なんて言ってねぇだろ?突然だったから、その…ちょっとビックリしたんだよ。」

まさかさっきまでお前も知ってる男とヤッてました、なんて言えるはずもない。
出来るだけ動揺を悟られまいと虎徹は必死に笑顔を作る。
しかしその努力は一瞬にして崩れ去った。

「バイソンさんと鉢合わせたら困るからですか?」

「バニー…お前……」

「何にせよ玄関先でする話じゃないですよね。それに貴方もいつまでもその格好じゃ風邪ひきます。」

「そう、だな…取りあえず…上がれよ。」

「ええ、お邪魔します。」
最早何の言い訳も通じそうにない。
虎徹は覚悟を決めてバーナビーを部屋へと招き入れた。



流石にバスタオル一枚の格好でする話でもないだろう。
虎徹はバーナビーを招き入れたリビングとは別方向に足を向ける。

「ちょっと待ってろ、今着替え…っ!?」

急に後ろから腕を引かれ振り向くと、直ぐ目の前にレンズ越しの翠瞳が無表情で自分を見つめていた。

「バイソンさんと…付き合ってるんですか?」

「…まさか…ただの腐れ縁だ。」

「ただの腐れ縁であの人と寝てるんですか?」

「お前…やけに直球だなぁ…」

バーナビーの歯に衣を着せぬ物言いに虎徹は困ったように苦笑する。

「……軽蔑するか?」

「軽蔑するかなんてどうでもいい。僕は理由を聞いてるんです。」

グッと、虎徹の腕を握るバーナビーの手に力が入る。
その痛みに一瞬顔をしかめながら虎徹はバーナビーの態度に違和感を感じ逆に問い返す。

「アイツと寝る理由なんて…そんなもん聞いてどうする?」

「理由によっては僕にも覚悟があるってことです。」
バーナビーの言う覚悟の意味が虎徹には見当もつかない。
バディを解消するとかヒーローの資格もないから辞めろとか?
どのみち曖昧に言い訳をしたところで素直に引き下がる男でもない。
虎徹は小さくため息を吐くとゆっくりと口を開いた。

「友恵が死んだ時、俺はそりゃあ…酷い状態でなぁ。酒に溺れて自分でも何やってんだか分かんないような有様でよ。楓も居たのに…俺には周りが全然見えなくなっちまってたんだよな。」

俯いてポツリポツリと話し始めた虎徹を促すようにバーナビーは静かに沈黙する。


「そんな時だ、アントニオに『何やってんだ』って思いっきり殴られてさ。でも酒やヤクに溺れる以外にグズグズになる方法なんて他に思い付かなくてさ、『だったらお前がなんとかしろ』って泣いて縋って…あんときゃお互いどうしてそんなことになったのか…まぁ結局それがズルズル今に至っちまってるってわけだ。」

「新しい…女性の恋人を作ろうとは思わなかったんですか?」

「嫌いで別れた訳じゃなかったし…なかなかそういう気分にはなれなかったんだよなぁ。それに今じゃもう…こんなオジサンだし?」

鼻の頭を掻きながら困った様に笑う虎徹をバーナビーはただじっと見つめる。

「じゃあ、何でバイソンさんとは続いてるんです?」     
「そこはまぁ…かきっこの延長っていうか…そこまで枯れきっちゃいねぇ男の性ってや…つっ!?」

いきなりバーナビーに正面から抱きすくめられ虎徹は驚いて目を丸くする。

「バニー…?」

「だったら別に…相手はあの人じゃなくてもいいってことですよね?」

「……はい?」

バーナビーの言葉の真意が掴めずに虎徹は語尾の上がった返事を返す。

「例えば貴方の相手が僕だったとしても。」

「ちょっ…ちょちょっ…!?バニーちゃん!?何を血迷ったこと言ってんのかなっ!?」

予想外のバーナビーの言葉に虎徹はワタワタと腕の中で慌てだす。

「別に血迷ってなんかいませんよ。貴方が子持ちヤモメのくたびれたおじさんてことは、今更言われなくても僕だって十分承知してます。」

「うわぁ…それって身もフタもないっていうか、その言い方にオジサン傷付いちゃう…とかじゃなくてッ!!」

1人でノリツッコミ突っ込みのように興奮する虎徹を煩げにバーナビーが制する。

「全く貴方は…この状況で、ここまで言っても分からないんですか!?」

「分かるわけねぇだろ!?急に押し掛けてきたかと思えば急にワケ分かんねぇこと…うおっ!?ちょっ…バニーちゃんっ!?」

ふいに回された腕にいきなりお姫様抱っこされ、虎徹が慌てた悲鳴を上げる。

「もういいです。貴方相手に口で説明する方が難しいってこと、忘れてましたよ。取りあえずベッドはどっちですか?」

「ベッドって…バニーちゃん!?自分の言ってる意味分かってる?」

「当然です。今から貴方の言う『かきっこ』とやらと好きな相手とのセックスの違いを確かめに行くんですから。」

「好きな…相手、って…」   
「鈍感もここまでくると呆れるを通り越して殺意を覚えそうですよ、おじさん。早くベッドのある部屋へ案内してくれます?スーツ無しでのおじさんのお姫様抱っこって 意外と辛いんですから。」

「随分と色気のねぇ誘い文句だな…バニーちゃん…」      
「貴方相手に有効と思われる誘い文句が見つからないだけです。」

ああ言えばこう言う。
ヒーロースーツ無しで抱かれて見上げた顔は既に勝ち誇った笑みを浮かべている。
口で説明どころか(兎のくせに)聞く耳も持たない相棒に、虎徹は諦めて寝室の場所を指差した。


正直 虎徹としては先刻までアントニオと行為に及んでいたわけで滑りさえ良くなればいい、くらいのつもりだった。
だから自分でさっさと塗り込めようとしたのだ。
バーナビーさえあんなことを言い出さなければ…。

「痛かったら教えてください。加減が…分からないかもしれません。」

「あー…了解。」

足の間を陣取られた虎徹はぬるい返事を返す。
その声を全く無視するかのように、バーナビーはローションを纏わせた指を虎徹の体内にゆっくりと埋めていく。

微かに息を詰める気配がしてバーナビーは虎徹の方を見遣る。
腕で目元を覆い隠しながら呼吸を潜めるその姿に、バーナビーの鼓動がドクリと跳ねる。
視線を戻すと根元まで埋めた指を遠慮がちにグルリと捩じってみる。
途端に内壁がキュウとバーナビーの指を締め付けた。

はぁ、と。
虎徹の薄く開かれた唇から掠れた吐息が零れる。
そんな他愛ない動作の一つ一つが先ほど放ったばかりのバーナビーの中心に再び熱を集める。

「痛くないですか?それにしても…凄い締め付けですね。それに貴方の中、とても熱い…」

「バニーちゃん、頼むから…実況すんのだけは勘弁してくれる?」

虎徹は目だけじゃなく耳も塞ぎたい心境で情けない声を出す。

「そうですね、集中します。」

日本人的に言えば正座をして姿勢を正すが如くバーナビーは真面目に返事を返す。
決してそういう事を言っているのではないのに、と思う気持ちを虎徹はグッと飲み込む。

正直 前戯というよりは何の公開講座だ、というツッコミを入れたいところである。
しかしバディであるバーナビーの指が自分の中に入っている、それはそれで虎徹にとっても確かな興奮材料であった。

整えられた爪と長い指が拙い動きで内壁を探る。
焦れったさともどかしさを感じながらも、虎徹はその動きに じっと身を委ねる。
やがてそれは少しずつ覚えのある感覚を虎徹の身体に思い起こさせていく。
バーナビーの指がある一点に触れる。
途端、虎徹の身体がビクリと弾んだ。
当然その反応の意味にバーナビーも気が付かないはずはない。

虎徹は恐る恐る目元を覆っていた腕をずらしバーナビーを見遣る。
バチリと視線がかち合った。
その瞬間、虎徹は本能的にヤバイと察知する。
バーナビーは普段 虎徹には滅多に見せないような綺麗な顔で微笑んだ。

「解剖生理学も学んでおいて損はない、ということが今 立証できましたね。」

「ちょっ…待て!!…ぅあっ!…バニ…ッ…」

玩具を見つけた子供のようにバーナビーは楽しそうに虎徹の弱い部分を刺激する。

「気持ちいいですか、先輩?…勃起してきましたね。それに…腰も揺れてますよ。」

「だからっ…ソコばっ…か、ダメだって…!!」

閉じようとする虎徹の膝を押さえ込みバーナビーは執拗なまでに虎徹の前立腺を攻撃する。

「ああ、先走りが滲んできてますね。このまま一度イッておきますか?年だって言う割には…まだ余裕ありそうじゃないですか。」

「バニーちゃんは良くてもオジサンはダメなのっ!いーから、ストーップ!!」

虎徹の必死なまでの制止に、バーナビーは名残惜しそうに埋めていた指を引き抜いた。



「…ったく、男とは経験御座いません、つってた男が いきなりあそこまでするかよ…」

ブツブツと文句を言いながら虎徹は再びベッドボードに手を伸ばす。

「貴方こそ、処女でもないのに何だってそんなに勿体ぶるんですか?」

「別に勿体ぶってんじゃなくてだなぁ!!…あー…まぁ、いいや。取りあえず今日のバニーちゃんの役目は…ホレ、これ ちゃんと付けてくれよな?」

虎徹の手から放られたゴム製品をバーナビーは心底嫌そうにキャッチする。

「これってどうしても着けなきゃ駄目ですか?」

「ダメに決まってんだろ?急に呼び出しきたら困るじゃねぇか。戦ってる最中に腹でも下したらシャレにもなんねぇよ。」

想像したくもない、というような顔で虎徹は頭を左右に振る。

「折角好きな人と初めて身体を繋げるっていうのに、こんなまどろっこしいもの着けたくありません。」

バーナビーは虎徹から受け取ったコンドームをポイッとベッドの端に投げ捨てる。

「…バニーちゃ〜ん?おじさんの話、ちゃんと聞いてたかなぁ?」

「大丈夫です。もし万が一緊急コールがきても貴方の分までフォローしてあげますから。」

右と言ったら左、左と言ったら右。
バディを組んだ当初から素直に人の話を受け入れる男ではなかった。
それでもフォローしてくれると言った分だけ まだ成長したと言ってもいいのだろうか。
虎徹は今まさに自分に覆い被さるバーナビーを見上げながら小さく溜息を吐いた。




「それじゃあ、入れますよ?」

「ん…最初はゆっくりな。」


虎徹の誘導でバーナビーはグッと腰を押し進める。
くちゅりとした水音と共に熱い粘膜に包まれる。
纏わりつくようなその感触は想像以上に悦くて。
気持ちを落ち着けるように はぁ、とバーナビーは1つ息を吐く。
そして気遣わし気に虎徹に尋ねた。


「…動いても?」

「…いーよ。」


虎徹は薄っすらと微笑んでバーナビーを受け入れる。
さっきまで不敵に自分を翻弄していた男がこうしてまた自分に気遣いを見せる。
こんなところは本当に真面目で可愛い奴なのだ、と。

同意を得たバーナビーはゆっくりと腰を動かし始める。
そして徐々にそのスピードを速めていった。

その動きに呼応するように虎徹の肉壁がバーナビーを締め付ける。
まるでもっと奥まで寄越せと言わんばかりに。
バーナビーは虎徹の膝を抱え上げると更に深い場所へと自身を打ち込む。
薄く開いた虎徹の唇から聞き取れない声が零れた。


「虎徹さん…?」

バーナビーは動きを止めないまま虎徹に問いかける。
すると熱で潤んだブラウンの瞳が堪らないと訴えた。


「バニー…やべぇ、メチャクチャ…気持ちいッ…」


突く度に切れ切れに上がる声。
しなやかにしなる背中。
持ち上がる顎。

敵に急所を見せるように晒された虎徹の喉元にバーナビーは思わず喰らいつく。
その反動で抱えた膝は胸に着くほどを折り曲げられ一層挿入を深くした。


「ちょっ…バニッ…激し過ぎ…っ…」

「貴方が…悪いんです。僕を…煽るようなことばかりっ…」


バーナビーはこれ以上ないというような激しさで腰を打ち込む。
肉と肉のぶつかる音がロフトに響き渡る。
その音に混じってあああ、と虎徹の唇から言葉にならない声が散った。

バーナビーの雄を限界まで飲み込んだ身体は早く吐き出せとばかりに貪欲に締め付ける。
その誘惑に眉根を寄せ必死で耐えながらバーナビーは虎徹の最奥 を激しく突き上げた。

虎徹の中心からは堪え切れない滴がポタポタと散っていく。
それは同時に密着するバーナビーの腹を濡らしていった。
限界が近いことは既にお互いが理解していることで。


「虎徹さんッ…もう、限界ですっ…」

「あ…バニッ…俺も…―っ!!」


ギュッと虎徹がバーナビーの首にしがみ付く。
その瞬間、二人の腹を温かいものが濡らしていった。
そしてバーナビーも同じ強さで抱き締め返しながら虎徹の中に己の熱を吐き出した。




「で?実際ヤッてみてどうよ?」


虎徹はうつ伏せに寝転がって枕を抱えながらバーナビーを見上げる。


「想像以上に…良かったです。」

「ハハ…そいつァ良かった。失望させなくて、俺も 一安心ってとこだな。」


照れくさそうに笑う虎徹にバーナビーの胸が締め付けられる。


「僕からも聞いていいですか?」

「あん?何だよ、改まって?」

「虎徹さんは僕のこと、どう思ってるんです?」

「どうって…」

「取りあえず身体では応えてはくれましたけど…この先、恋愛対象として考えてもらえるかってことです。」

「恋愛対象…ねぇ…」


ハッキリとは口にしない虎徹にバーナビーの胸がズキリと痛む。


「もしかしてこれからも…バイソンさんともこういうことが続くんですか?」

「ん〜…それは無ぇわな。」

「どうしてです?」

「俺だってそこまで尻軽じゃねぇよ。それにバニーちゃんが本気だってんなら、流石に俺だって 本気で応えなきゃマズイだろ?」


適当にはぐらかすことも出来たかもしれない。
それでも真剣に答えを考え出そうとする虎徹の気持ちがバーナビーには嬉しかった。


「それって…期待してもいいってことですよね?」

「あ〜まぁ、今後の展開にもよるけどな。」


髭を擦りながらまだ思い悩むような虎徹に対しバーナビーは満面の笑みを浮かべる。


「大丈夫です。毎日でも頑張れば直ぐにコツは掴みますから。きっと貴方を満足させてあげられます。」

「いや…だからバニーちゃん?おじさんは別にそういうことを言ってるわけじゃ…」

「期待しててください、虎徹さん。」


バーナビーは嬉しさを隠しきれない声できっぱりと返事をする。

この先も きっとこの相棒は聞く耳をもちそうにない。
それでも自分に飽きるまでは気長に付き合ってやろうか、と思う虎徹であった。



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あきゅろす。
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