シンク・オブ・ダークネス
第7章〜ユリ〜

ストーカーされていることを気付かずに屋上に付いた。

だが、少年がまだ来ていなかった。

それも当然の事だ。

今の時間は普通の生徒なら、まだ食事をしている時間であるからだ。

暇だったので暇つぶしとして本を読むことにした。

前に没収されかけた物だ。

あの時はどうにかばれずにすんだため本は無事であった。

さっそく、しおりを抜き本を読み始める。

その光景をバレないような動きをしながら見つめる、2人の影があった。

2人が誰だか、何を目的で来たのはわかっていたが、とりあえず今は無視することにした。

2人は思った通りの行動が起きなかったため、何かもめる。

「おい、なんだよこれ。おめぇがあんなこと言ったから一緒に来てやってんだぞ、何も起きなそーな感じだろーが」

「はぁ?何も起きねーだぁ?馬鹿言うな!これから起きるんだよ。これからボン!キュ!ボン!体系の女性来てあんなことやこんなことをやらかすんだよ、少し待ってろ」

「何言ってんだよ。見てみろ、本読んでんだろ。もう、そんなこと無いって、さっさと戻ろう」

「いや、あの本は普通の本では無い」

「じゃあ、何なんだよいったい!」

「フフッ、決まってんだろ」

ここで1人は間を起き、「いわゆるテクニック集というやつだ!」と真顔で叫ぶ。

その叫びにもう1人は小声で注意する。

「何叫んでんだよ!相手はケイトだぜ。この高校最強の、バレたら終わりだ」

「いや本気になって……つい…」

2人は俺が本に夢中だったと思いこみ、すっかり安心する。

だが、実際俺はその2人の事に気づいていた。

あえて、相手をしない。

それがまた、面白いものだった。

だが、向こうはこちらが気づいていないと思い込み、話を続ける。

「くそっ、カバーのせいで何の本だかさっぱりわかんねぇ」

「だからいったろ、テクニック集だって。あぁやって覚えんのよ。ヤラしい事」

「でも、そういう雑誌みたいなやつって、ほとんど大きいサイズのやつだろ。あれはどう見ても小さいぜ。なんか普通の小説って感じ………」

そこで、一人の男が考えだす。

そして、2秒程度考えた所で、答えを見つけたようなリアクションをする。

「そうか、わかったぞ!」

「えっ、何が?」

「ふふふ、あれはすっげぇーエロい内容の本なんだろう」

「おまえ、いっつもそういう方向に事運ぶよな。図書管理の人の事といえ、今の話といえ」

すると男は薄ら笑いを浮かべる。

「それが、健康的な学生というものだ」

「だからモテないんだよ」

「………モテないだとぉっ…!?馬鹿言うなぁ。お前は知らないと思うけどな、俺は毎日の如く告られてんだぞ!モテテんだぞ」

「はいはい、嘘ばっかー。俺は知ってんだよ3日前E組の女に告って失敗した事ぐらい」

くだらない会話を続けている2人の内の1人が図星をつかれたように静かになる。

そして間をおいて、1人が聞く。

「何で知ってんだ?」

「あれ?噂で聞いたんだけど、ま・さ・か・さ・その反応は、ホントだって事?」

「あぁ、実の所そうなっちゃうよなー」

ちょうどその時、屋上に1人の女が来た。

スタイルは普通だが、顔立ちが良くかなり可愛い。

彼女はユリといい、付き合っている?感じの関係だ。

俺は何故彼女がここに来たのか疑問に思う。

ユリの顔を見た時バイオリンを持った少年の顔が俺の脳内に浮かび上がる。

俺が本を読みながら、

「何か用か?」と尋ねると向こうが来た要件を言う。

「ケイトが私の弟のバイオリン壊したってホント?」

んっ…?

こいつがあの事に付いて知ってる?

しかも弟のバイオリンって事は……まさか!

俺は本をポケットに直し、驚愕の表情を顔で表しながら言う。

「え、もしかしてと思ったけど、あの1年の姉ってまさか、ユリだったの!?」

「えぇ、そうよ。それになんか10万弁償するとか言ってたらしいじゃない。その分を代わりに貰いに来たのよ。弟さ、気ぃ弱くてアンタ相手だと、まともに話せそうにないから」

ユリの言葉に疑問を抱く。

その疑問を解くためユリの聞く。

「それ、どういう意味だよ」

「喧嘩の強さと怖さだけが取り柄な人だって事」

「ケッ、取り柄なんか俺を探ればそれ以外にいくらだって、出てくんだよ」

「例えば?」

「そうだな〜」

自分の取り柄の事を考えてみるが、何故かしら見つからない。

人間は1人1人才能があると言うが、それを見つけることが、なかなか難しい事だ。

こう言う時は自信を持って答えるに限る。

「しいて言うなら、強いとこにカッコいいとこかな」

「まず自分を見て、物事を言う必要があるね」

「ケッ、何言ってんだか、自分の事を知ってのうえ言ってる事だぜ。ユリは幸せもんだよ。こんなカッコイイ彼氏がいて」

「でも、かなり馬鹿!」

その1言で心に何か突き刺さったような感じがした。

俺は静かに口を開く。

「それは、俺に対して言ってはいけない、禁句だぜ」

俺があまりにも冷めた感じで言ったため、ユリが言う。

「ケイトってさ、何か悪口言われても、あまり感情的にならないっていうかなんて言うかな〜」

「要するに、リアクションが貧しいってか?」

「そういう事」

「そりゃ、そういうのにまともに相手してると、疲れるだけだし」

「言われるだけ言われて、悔しくないの?」

「全然悔しくないね、言う奴には言わせときゃー、そのうち収まるし。ま、全然懲りないような奴には流石にキレるし。ま、だいたいがこっちから言ってるからな」

「確かに、ケイトはいつも変な事言って、喧嘩売るからな〜」

「うっせー、うっせー」

「あのさ、話戻すけど、約束通り弁償してくれるの?」

「何が?」

「弟の件の事よ」

「知ってか?金は縁の切れ目だって事」

「別にこっちは払うとか、払わないとかはどうでもいいんだけどさ」

「じゃあさ、期限直しにホテルでも行くか?」

「い…イヤよ!」

「はぁー、恐い」

その会話を聞いていた2人の内の一人が自分の連れに聞く。

「おいおいおいおい、なんだよもっとスタイル抜群な奴かと思ったよ、ガッカリだぜ何か子供みたいな顔した奴じゃねーか。まさかケイトの野郎ロリだったとはなー、学校最強の名も恥じるぜ、なぁ?」

聞かれたほうは何故か汗が出ている。

「おい、どうしたんだよ。何か、汗出てるぞ、冬だっつーのに」

「あいつだ」

「ハァ?」

「あいつだ、俺を振った3年E組の女は…………」

「マジ?」

「クソーー、ケイトの野郎見せつけやがってぇーー。もう黙っちゃおけねーーー」

1人の男が立ち上がり、ケイトから約5メートル離れた位置に立つ。

そして、叫ぶ。
「アーレスケイトォォォォォォ!!貴様をここでフッ飛ばし、ユリを返してもらう!」

「ハァ?お前図書室で待ってたんじゃなかったのかよ?それと返してもらうってなんだよ」

俺の目の前にいるクレイジーな男は俺の言葉を無視しさらに続ける。

「ふふふ、俺はな………」

ここで男は間をおき、

「ユリの事を貴様が思っている以上に愛している!」

俺はその男から思わず退いてしまう。

だが、その男はまだ喋り続ける。
「俺は3年前のあの日からユリの事が気になっていた、だが、時は立つばかりであった、それまで俺の心がどれだけもやもやしていたものか、男の貴様には分かるだろ!?」

俺はその気持ちが分からないと伝えるような態度で言い返す。

「ハァ〜?残念ながら、その気持ちは俺には分からないね。俺はな、好きな奴にはなるべく早く思いを伝えるようにしてるからな、お前みたいに伝えきれない奴を英単語ではなんて言うか知ってるかよ?」

ここで間を作り、言い放つ。

「CHICKENって言うんだよ!」

「な……なんだと?」

男はあまりのショックに怯み、膝を屈する。

「臆病な上に心もデリケートか、最悪だな」

男はいきなり膝を屈したまま笑いだす。

「ククク、この俺が心が弱い上に臆病だと?笑わせるな」

男はむくりと立ち上がる。

「なら、自分が臆病では無いとどうやって分からせてくれるんだ」

「たしか、ケイト。お前はこの学校で一番喧嘩が強い男って聞いて事があるんだが、それは本当なのか?」

俺はいきなりそんな事を聞かれたので、正直に返す。

「あぁ、どうやらそのようだな。だからどうした?」

「お前の喧嘩相手になってやる」

「おいおい、マジかよ?別にいいけどさ。下手したら死ぬぞ、お前」

「ふふふ、死ぬ?ば……馬鹿言うなよ」

「俺に喧嘩挑むんなら、それぐらいの覚悟できて貰わなくちゃ、こちらの立場として困るんだわ。俺負ける気しないし」

「その自信は何処から来てるんだ?」

「知らないね、しいて言うなら経験かな」

「ほぅ、ますますやる気になってきた」

「んじゃ、そろそろやるか」

「ちょっと待ったぁぁぁーーー!!まだ心の準備が」

「早くしな」

男は一息つき、構える。

「フフフ、見せてやろうケイト!俺の力を!」

俺は愛に燃えている男を冷やすようなテンションで困ったような顔をしながら、両手を振り、呆れた動作をする。

「……やれやれ……じゃ、かるーくいくからよ。文句言うなよ」

「さぁー、どこからでもかかってこい。俺がきちんと相手してやる」

挑発されたことに腹が立ち、相手を睨みつける。

「じゃあ、行くぞ……」

俺は走りだし相手から残り距離が中距離というところでジャンプして、空中でキックを行う。

それはみごとに顔面にヒット!

相手は体勢を崩し、バタリと倒れる。

「まったくだな。これではいいとこ見せるどころか、無様なとこ見せちまったな」

そして相手に背を向けると、

ボコッ!

背中に何か殴られた感じの痛みが走る。

後ろを振り向くと、そこには鼻血を垂らした男が、男は鼻血を押さえながら言う。

「まだだ、これが……俺の根性」

「あきらめな。アンタじゃ話になんねーんだよ」

「やっぱ、お前強いわ。俺なんかじゃ太刀打ちできねーわ」

「当然だろ」

冷たく言って、俺はさらに言いつける。

「アンタさ、図書室で管理係やってる奴。誰だか解んねーけど、実際好きなんだろ?思い伝えて来いよ。物事はやってみなければどうなるか分からないもんだぜ」

そう言うと、男はムクッと立ち上がり、

「そ……そうだな。俺、慢心してたぜ………」

と言い、そして続ける。

「そんじゃ、勇気出して、今からにでも思いを伝えてみるか」

「有言実行だからな」

俺がそう言うと男は拳を見せ返事をする。

「おう!」

そして、男は屋上から校内へと向かう階段へと向かって行く。

その背中に向けて俺は聞く。

「結果でたら教えろよ」

男は少し振り向き自信満々に言う。

「あぁ、いい結果出してきてやんよ!」

男のつれが男に聞く。

「おいおい、まさかホントに告るつもりか?」

「誰にも言うんじゃねーよ、この事」

「どうかなー?」

「おめっ!」

2人は屋上から去って行った。

2人が屋上からいなくなった時、俺はユリに言う。

「ユリ、すまんがやっぱり弁償できそうにねーよ」

「いやいや、いーって最初から期待してないし」

あの事を許してもらった事に安心し、ユリに聞く。

「でもさ、万が一俺がここで10万持って来てたらどうする?」

「そりゃ、弁償代として頂戴するよ」

「ユリさぁ〜、お前見た目によらず強欲だなぁ〜」

「だって、うち貧乏やし」

「いや、お前金持ちだろ」

そう言うとユリは考えながら答える。

「そうかなぁ〜?いたって普通だけど」

「俺から見たらお前らの普通の生活も金持ちに見えるし、最近は食べていくだけでやっとな有様ってわけ」

「そりゃ、可哀そうだね」

「可哀そうだねって、それだけ?もっと言う事あるっしょ、今夜は家に来てもいいよとか」

「ようは家に来たいわけね」

「よく分かったな、腹減ってるから頼むぜ」

「別にいいけどさお腹空いてるっとか言って、いきなり襲うとかしないよね?」

疑り深くそう訊かれると、考える動作をしながら答える。

「どうだがな〜、気分による」

「じゃあ、来るな」

「嘘だよ、嘘、そんな事しねぇよ。でも、女っていきなり抱かれるとキュンっとくるらしいな。つーことはさ、いきなり襲われてもなんかくるわけ?」

「何も来ないわよ。アンタに限り」

「ひっでー、言い方だな、こんなカッコイイ俺に対し」

「カッコよくないわよ、変態バカ!」

「変態バカ?何所がだよ!?」

「アンタそのものが」

「じゃあ、その変態と付き合ってるユリはどうなんだよ」

「そりゃもう、優しくて可憐。頭も良い、完璧な女よ」

「胸小さいのに、自信だけはすごいな」

そう言って、俺がユリの胸に視点を送る。

「小さいって、胸はちゃんとあるわよ」

ユリが顔を真っ赤にして反論する。

その顔を見てさらに追い打ちをかけたくなり、続けて言う。

「写真集に載ってる貧乳グラドル以下じゃねーか、こんなのまな板同然だな。そこで魚拵えられるんじゃねーのか?」

「いや、それは比べ方が明らかにおかしいと思う」

「おかしいか?こんな感じだろ、比べ方と言えば」

「そんなもんかなぁ、てゆーか、アンタ。グラビアの写真集とか読んでるのー!?」
 
隠し貫いていた事がばれて、少しギクッと思う。

「ふ、ふふふふ…普通だろ」
 
明らかに混乱しているのが見て取れる。

「そんなの買って、恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくないな、だってさ、何だかんだ言っても雑誌じゃん」

「確かにそうだけど」

「見えそうで見えない!それもなんか想像力揺さ振る
っていうかさ」

「無駄な想像力の使い方ね」

「まぁ、ユリがノーブラノーパンで濡れたワンピース着たりしたとしても、なんかパッとしなさそうだがな」

「よく、そんな事を易々と言えるわね」

「細かい事を気にしないのが男ってもんよ」
 
拳で自分の胸を叩きながら決めたように言う。

「ケイトは少しは気にした方が」

「いや、俺は気にしたくないね、ポリシーっていうのか?そういうの」

ユリは俺の言葉をすっかり無視し、腕組みをしながら言う。

「頭良くて、変態じゃなかったら、文句なしで最高なのに」
 
何の事を言ってるのか分からず聞く。

「最高なのにって何が?」

「アンタがよ」

「そういうなや、人間、どこかに必ず欠点があるものだよ」

「よく言えたものね。どこか以前に、欠点だらけの張本人」

「誰が?」

そう言い返すと頬を摘ままれ、引っ張られる。

……意外と痛い。

「イタタタタッ!いきなりなんだよ!」

「今頬っぺた摘ままれてる奴が欠点だらけの張本人だっていってるのよ!!」

ユリは言い終わっても摘まんだ手を離そうとしない。

「そういえば、前のテストなん点だったっけ?」

「へへへっ覚えてねーよ、1桁だったって事しか」

「わかる?次のテストもそんな点数だったら、どうなるか分からないのよ!!下手したら今年も卒業できないかもしれないのよ?そんなんでいいの!?」

感情的になるほど痛みが増す。

俺はまだ、痛みに嘆いていた。

「イテテテテテッ!!やばい頬っぺたやばい、千切れる!千切れる!」

「ねぇー!痛いっていってないで、何か答えたらどうなの!!」

「マジ離して、もげるもげる!」
ユリが摘まんでいた手を離すと、頬っぺたが真っ赤になっていた。

何度の頬をスリスリとし、痛みを和らげようとする。

「助かったー、頬っぺたもげてない?」

「まったく、ホントに今の事しか考えないよね」

「あぁ?ちゃんと考えてるって、この後どうするかって事だろ?決まってんだろ」

「お、なになに?聞かせてよ?」

ユリが興味を示したので、俺はどう答えるか考え、出てきた考えを即決で言う。

「大手会社の社長」

自分でもこれは大げさな答えだと思ったが、どう反応するのか?

「無理だな」
 
1秒足らずで即答される。
 
その言葉に反応し、自信満々に言い返す。

「無理だぁ?俺だぜ、俺!不可能を可能にする男だぜ!」

「まぁ、確かにケイトがここに受けた時はさ、ほぼ不可能だろうと言われたはずなのに、今ちょうど、ここにいるし」

「だろっ!!だからさ、大手会社の社長になることだって楽勝だぜ」

ここでユリが可愛らしく笑ってみせる。

「何が可笑しいんだよ?」

「いや、大手会社の社長になるのが楽勝って言う人初めて見たから。おかしいと思って」

「ケッ、そんなの冗談だよ」

「じゃあ、何すんの?」

「わっからねぇ〜な〜。真面目に将来のことなんか考えねぇーし」

「そんなんで、いいんだが」

「いいんだよ、人生は楽しければ」
 
腕時計を見てみると時刻は12時30分になっていた。
 
あと、5分後に授業だ。

「やば、教室戻っとかねぇ〜と、時間が」

「もう、そんな時間?」

「楽しい時は時間を早く感じるもんだよ。そんじゃ、今日お前の家来るから、ベット用意しとけよ」

すると、ユリは、「何言ってんのよ?」と怒り気味に言う。

「そんじゃ、そっちも授業遅れんなよ」

屋上の階段を下り教室に向かった。


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あきゅろす。
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