※都合のいい女
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見覚えのある車
見覚えのある男
男が駆け寄ってくる。
男との距離が縮まるのと共に、リエの胸の鼓動もどんどん大きく早くなり、乱れる呼吸を整えられない。
「うそ‥‥」
男は何も言わずにリエを抱き締めた。
リエを包み込む大きな体、長い腕。
そして
リエをとろけさせるあの香り。
全身の力が抜ける。
「マー君‥」
リエの目から涙が溢れ出る。
零れ落ちる涙を優しく拭うマサノリ。
「ダメだ‥俺も泣きそう」
マサノリは更に強くリエを抱き締めた。
「‥会いたかった」
マサノリの小さな声がリエの体全体に響き渡る。
ずっと聞きたかったその声。
ずっと待ってたこの温もり。
リエが一番会いたかった男が今ここにいる。
マサノリの腕に抱かれ、ぽっかり大きく開いていたリエの心の穴が、柔らかくゆっくりと埋められていった瞬間だった。
「リエ‥痩せた?」
「うん、少し‥」
「俺のせい?」
「そうだよ‥マー君のせい」
「ごめんな」
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