夢。 プロローグ、 「・・・・・鬼、」 暗い暗い闇の中に、一人の少女。 その少女の腕の中には、ボロボロになったぬいぐるみ、ひとつ。 「穂香は、どうすればいいの・・・・?」 近づいてくる男たち。笑ってくる女たち。 その目には欲望、その目には嫉妬。 自分がどんな香りを出してるのかさえわかりやしない。でも、その香りで男たちが寄ってくるのは事実で。 その様子をみて、嫉妬に狂った女たちは己を殺そうとする。 どんどん時が過ぎていって、己が成長しても。 ☆ 「もう、こんな世界なくなってしまえばいい・・・・・・」 一人の少女は、呟いた。 ある教室の窓側の席に座って、目の前にある綺麗な机を眺める。 窓の外からは、鳥の声が聞こえたり、スポーツをしてあそぶ男子生徒の声でにぎわっていた。 自分の周りには、鬼。 その生き物はどこまでも自分を追いかけてきて、喰らおうと粋がる。 その生き物はそんな自分の存在が憎くて憎くて仕方ないらしく、自分を殺そうと粋がる。 佐野穂香。それが彼女の名前であった。 幼い頃、兄につけられた刻印のせいで、彼女の人生は悲惨なものと化していた。 刻印の香りに惑わされて、欲望のままに寄ってくる男たち。 嫉妬と怒りが混じって、狂乱して襲い掛かってくる女たち。 自分に、味方なんていないんだ。所詮は皆、鬼。 できることなら家にいたい。 できることなら普通の女子でありたい。 できることならー 自分の、人生を送りたい。 転校先の学校が決まったといわれた。それは今朝で、 喜んでいいのか、それとも絶望しなくちゃいけないのか。穂香は不安だった。 何回暴力をふられたことだろう。 その体をわたせ、と襲ってくる男たち。 私の愛する人をとった、と殴ってくる女たち。 高校生になった今でも、その恐怖は終わらない。 ああ、神様は私に微笑んでくれやしない。寧ろ罰を与えるだけ。 ―――神様、私は何をしましたか、 ―――私は、何か貴方様の怒りに触れるようなことを、致しましたでしょうか。 明日から通うこととなる学校の前日、その丸く帯びる天にいるお月様に、穂香は手を合わせていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |