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甘くも苦い、手作りの


やってきた。とうとうやってきた!!

「バレンタインが!」

切羽詰まった様に楸瑛が叫んだ。絳攸は側で缶コーヒーを啜りながらただ傍観していた。別にたいしたことではない。何時もこの時期になると楸瑛は女の子から紙袋何袋分ですか?と聞きたくなるくらい、沢山の甘ーいチョコレートを貰うのだから。ただ、今年は何時もと違って、今の楸瑛は微妙に甘い物恐怖症なのだ。それは絳攸も同様だけれど。

「どうしよう絳攸!チョコレートがやってくる!」

「しっかりしろ。そもそも普段からフェロモン振り撒いて女をたぶらかしているお前が悪い」

「……だって…」

楸瑛はちらりちらりと絳攸の方を見てくる。絳攸は訳がわからん、といった風に睨み返しながら缶コーヒーを飲み干した。

「ま、俺には関係ないが」

「何言ってるの絳攸。君にもチョコレートがやってくるよ」

「……は?」

「私が色々と細工しておいたから。なんたって私達は君曰く、腐れ縁なのだから!」

だから君にもこの苦しみを味わって貰うよ!と叫びながら楸瑛は逃げた。何故なら怒り狂った絳攸が鬼神の如く追い掛けてきて、空になった缶を投げ付けてきたからだ。そして二人はそのまま各々の本能に赴くままに逃走を開始した。後ろから綺麗にラッピングされたチョコレートを持った女子が大量に攻めてきたから。(これこそまさに自由への逃走!)





夕日が綺麗な時間帯になって絳攸と楸瑛は再会した。あの後二人にチョコレートを渡したい女子達が、『楸瑛先輩(君)と絳攸先輩(君)にチョコレートを渡し隊』なんていうものを結成して、鬼ごっこを開始したのだ。二人にとってある意味、リアル鬼ごっこであった。

「ったく…!な、なんなんだあれは…!」

「つ、疲れた…」

結局、チョコレートを一つ残らず全部頂いてしまった。もうあれは女子じゃない(此処に十三姫あたりがいたら「恋する乙女程怖いものはないわよ」とか「恋愛は手段に構ってられないものよ」と教えてくれたかもしれない)。

「どうする?これ…」

「配るか…?」

多分知り合い(例えば静蘭や劉輝)の殆どは楸瑛と絳攸同様、大量のチョコレートを前にして途方に暮れているのだろう。
甘くも苦い、手作りのチョコレートを前にして二人は思案に暮れるのであった。





End




ギャグテイストで終了です(笑)楸瑛がちらりちらりと絳攸を見たのは絳攸からのチョコが欲しかったからです。それではお付き合い頂きありがとうございました!

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あきゅろす。
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