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ブラックコーヒーで口直し


「ちゃんとお口に合えば良いのですが…」

「とても美味しいですよ、邵可様」

「お気遣いありがとうございます」

邵可からの気遣いの言葉に強張っていた顔の筋肉を強制的に笑みの形にして、言葉を返す。もう背中には嫌な汗がだらだらと滝のように流れている。絳攸は心の中で鉄壁の理性鉄壁の理性鉄壁の理性と繰り返し繰り返し唱えていたが、無駄だった。甘い物に関しては歯がたたない。…その前に鉄壁の理性が何の役に立つか?という疑問は彼の中には起こらなかった。


(ああっ!何でこんなに生クリームの層が深いんだ!こんなに使わなくても!)

(しっかりしろ楸瑛!これは生クリームの層を深くすることによってケーキを大きく見せるという企業戦略だ…!)

(くっ…!なんて恐ろしい戦略なんだ…!)

(苺の横の生クリームの量が異常だ…!)


まさに以心伝心。
今や彼らは崩壊していた(あらゆる意味で)。





「「ご、御馳走でした…」」

何とか食べ切った二人は、今にも倒れてのたうち回り、苦しみたかった(特に喉がやばい!)。が人の手前でそんな事が出来る筈もなく。その時、微妙に憐れに思ったのか、静蘭が食器を片付けながら話し掛けてきた。

「何か飲み物をお持ちしましょうか?」

「「是非お願いします」」

「何がいいですか?」

「「ブラックコーヒーで」」

「わかりました」

   カオス
【この混沌を消す為にはブラックコーヒーしかない!この際父茶でも良いから!】

キッチンに行こうとしている静蘭が一瞬だけ神の様に思えた。普段は何と思っているかは口が裂けても言えない。少なくとも本人の目の前では。

「お待たせしました」


二人はブラックコーヒーで口直しが出来る!と喜びながら気品を失わない程度に目の前の湯気が立ち上っている黒い液体に飛びついたのであった。






End



本当は、コーヒー切らしてしまって…という展開にしようと思ったけど、それだと無駄に長くなるから辞めた…ら、短くなった(泣)以心伝心の部分は普段の私のケーキに対する思いです(笑)



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あきゅろす。
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