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似合わないショートケーキ


アメ事件(と言う程事件的な事でもなかったが)より数日後の事。

「おい、今日は劉輝と3人で邵可様のお宅へ訪問する日だから、今から行くぞ」

「あ、すっかり忘れてた。で、劉輝は?」

「先に秀麗と一緒に行ってるとメールがあった。何か手土産を買ってかないとな」

「そうだね」

そうでもしないと“紅父子命!”のタケノコ家人(←タンタン命名)もとい静蘭に何を言われるかわかったもんじゃない。楸瑛の場合は何を言われるか、ではなく何をやられるか、であるけど。

「勿論甘い物以外で」

「と、なると…」

「食材しかない」

食材なら秀麗はとっても喜ぶ。紅家の食卓は基本質素なのだ。

本来ならここは銘菓でも買って行くのが普通であろうが、残念ながら二人に甘い物を買う気は毛頭なかった。見る気もなかった。
食材と決まったらとっとと遅れない様に買いに行くべし。
二人は高級食材を求めて旅立った。


邵可宅は邵可が廃嫡されたといっても世界に名だたる紅財閥の長子な故に、大きい。
邵可宅に着いた二人はインターホンを鳴らした。

『はい』

「藍と李です」

『ちょっと待ってて下さいね。今開けますから』

言われた通りに待っていると扉が開いた。そしてそこにいたのはにっこりと黒い笑みを称えた静蘭。

「で、今日は何を持っていらしたのです?」

「「…………」」

二人とも手にしていた食材の入っている袋をスッと差し出した。中身を確認した静蘭はよく出来ましたとばかりに微笑んで何事もなかったように「こちらで皆様がお待ちですよ」と普通に客間に案内していった。

「いらっしゃい、お二人共」

「「………お邪魔します」」

何時もこの家に来ると元気とか気力とかが無くなるのは何故だろう?と疑問を抱きつつ楸瑛と絳攸は邵可に挨拶を返したのだった。(それは主に静蘭のせいです)





「すみません、絳攸殿楸瑛殿。娘は今劉輝君と買い物に行ってるのです。ですからこれでも食べて待っていて下さい」

案内されたソファーに座っていた二人の目の前に邵可は白い生クリームたっぷりのショートケーキを出した。

「「…………………」」

…ショートケーキ。虐め?
かなり予想外な事が起こってしまった。

「あ、有難うございます…」

「早速…いだだきます…」

絳攸と楸瑛、各々の頭の中でショートケーキを食べなくて済むような言い訳が浮かんでは消え浮かんでは消え、を繰り返していた。

何故か。それは何かを察したらしい静蘭が「残したりでもしたら承知しませんよ?」と言わんばかりに痛い視線を送り込んでくるから。

後に静蘭は語る。
似合わないショートケーキを前にして死人のような顔をしていた二人はとても見物だった、と。




End



色々とおかしくなってしまいました…。「藍と李です」とか「劉輝君」とか…そんな風に言うかなぁ。そして…静蘭が異常に黒いキャラになってしまった…(汗)




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あきゅろす。
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