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ミントガムは必需品
※『溶けないアメ』の続き




あと少しあと少しあと少し!

「やった溶けきった…!」

楸瑛の頭の中でファンファーレが吹き荒れた。ここまで来る道のりが長かった。甘味を発し続ける丸い物体。ヤツを倒した…!

「やったな楸瑛!」

絳攸も惜しみなく賛辞を送る。
さっさと噛んで退治すればいいんじゃないか?と考えたりしたが、噛んでしまうと歯にアメの破片がくっついて余計甘い地獄が長続きしてしまう恐れがあった。“甘い地獄”という単語は第三者が聞けば、魅惑的な響きが孕まれている様にしか聞こえないだろう。
しかしそんなに甘くない。

「ねぇ絳攸、なんか口直し持ってない?」

「奇遇だな。今俺もお前に聞こうと思っていたところだ」

「ということは…」

「持ってない」

キッパリと言い切られた。楸瑛は溜め息をつきたくなった。

「…仕方ない。買いに行こう」

二人は口直しを求めて旅に出た。





「絳攸そっちに売店はないよ」

「わ、わかってる…!ちょっとあの小鳥に興味があったんだ!」

「あーハイハイ。興味があっても前見て歩こうねー」

絳攸が楸瑛の前を歩いていたのだが何時もの方向音痴が働いてあっちへふらふら、こっちへふらふら。とうとう楸瑛も痺れを切らした。

「…仕方ないから手を繋ぐよ」

早く口直しを買いに行きたいのにふらふらされると余計時間がかかる。
最終手段の(絳攸が最も嫌がる)“手を繋ぐ”に出た。そうしてツカツカと早く歩いていく。

「離せ!」

「嫌。だって君さっきから色んな所に興味持っちゃって中々目的地に着かないんだもの。だから、」

前を見ていると思ったら楸瑛はいきなり絳攸の方を振り向いてこう言ったのだ。

「私を見て」

そうすれば他の物に興味が湧かなくなるでしょ?

暫く絳攸は耳まで真っ赤にして黙っていた。





この後無事に売店にたどり着き、口直しにミントガムを買った。

「ふぅ。これで口の中が救われた」

「…そうだな」

「あれ。なんか顔赤いよ?大丈夫?」

「だ、大丈夫だから触るな!」

心配して額に手を当てようとするがすぐに振り払われてしまった。

「そう。ならいいんだけれど」

そう答えながら楸瑛は、あのアメの味を思い出しそうになった。…暫くミントガムは必需品になりそうだ。




実は大学生設定で親友以上恋人未満。『溶けないアメ』では二人はくっついてる感があったけど、楸瑛→絳攸な感じ。この話は楸瑛←絳攸な感じかな…。まぎらわしい←




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