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Gift


御史大獄も終わり、下っ端官吏に戻った。出世コースを外れた二人は、公休日に絳攸の室でぼぉっとしていた。絳攸は寝台で身体を休め、楸瑛は椅子に座ってお茶をすする。

「楸瑛」

「何だい」

「お前…痩せたな」

絳攸の一言に、楸瑛は苦笑いすると傍に寝転んだ。

「君ほどじゃないよ」

絳攸の痩せこけた頬をそっと撫でた。

少し前は、もっとふっくらとしていたのに――

「でも…きみが――きみが無事で良かった」

ぎゅっと絳攸を抱きしめた。そしてすぐ笑う。

「なんだか恋する乙女みたいで大の男が気持ち悪いね」

つられて絳攸も笑った。




そしてふたりとも、『時』を悟る――




「…絳攸」

「…楸瑛」

同時に言葉を紡いで、絳攸が瞳を伏せた。

「きみが言おうとしたことは」

「お前と同じだろ、多分な」

そうか、と呟いて。

「――私たちは、もうこんなことをしている場合ではないよね」

楸瑛にはもう、藍家という盾はない。
絳攸もまた、黎深を失った。
意味があって捨てたものを無下にするほど、愚かに溺れているほどの余裕はもうないのだ――

「……そうだな」

「きちんと終わらせるためにも、あえて言うよ」

少し呼吸を整えて。小さく息を吐いた。

「別れよう、絳攸。私たちは、また友人という関係に戻るべきだ」

「それが、最善だろうな」

最善。

「――泣かないで絳攸」

そう言う楸瑛も、涙を流す。

「私はもう、君を抱きしめることが出来ないというのに…」

そう言ったきり、楸瑛も俯いて身体を震わせた。






もしこの動乱の世が治まったのなら

またあなたを全力で愛してもいいだろうか






「それじゃ、…また明日」

「…ああ」


こうして二人の愛は終わりを告げた。




明日、会う時はもう君を愛していては、いけない。



end.


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