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Gift

風が優しくそよぐ小高い丘に、楸瑛と絳攸は寝転んでいた。

「気持ちがいいね」

「そうだな」

ふたりが付き合って三月程経った頃、休みを利用して遠出した。遠出と言っても、馬に不慣れな絳攸のために、楸瑛からしたら近場と言える場所を選んだ。

「きみとこうしているだけで、私は幸せだよ、絳攸」

絳攸を見て微笑む。

「ん…」

絳攸はころりと転がって楸瑛の腕の中に収まった。

「どうしたの?」

くすっと笑って絳攸を抱きしめ、髪に口づける。

「ん、何だか腹が立つくらいお前が好きだなぁと思って」

楸瑛の衣を少し握って目を閉じた。




小鳥が鳴いて。
雲が流れて。
風がそよいで。

時が静かに過ぎていく。




――幸せだ。





「楸瑛」

「ん?」

「…もう、いいぞ」

「何が?」

「その…」

絳攸が珍しく歯切れが悪い。どうしたのかとそっと顔を覗き込めば顔が真っ赤。

ピンと来た。

「…本当に、いいの?」

「…ああ」

「君を、抱いても?」

「そうだッ」

楸瑛は嬉しそうに絳攸を抱きしめた。

「無理、してない?」

「無理は承知の上だ」

俺の身体はそういうふうに出来てないからな、と真面目に呟いた。

あんなに常連だった花街通いをぴたりとやめて、三月も誰ひとり抱かずにいるのだ。自分にはあまりわからないが、男の生理だってあることだし、いつまでも一人で…というのも何だか申し訳ない。

絳攸はそう考えていた。

浮気されるのも嫌だった。だが、自分は果たして感じるのだろうか。それが絳攸の心配事だった。

「じゃあ、今夜、私の邸で」

急に耳元で囁かれてぞくりとした。ぎゅっと目をつぶると、楸瑛が口づけて来た。

「っ…!?」

驚いて目を開けると、端正な顔が目の前にあって、自分の唇を貪っていた。

どくんと心臓が跳ねた。
こんな楸瑛は今まで見たことがない。
絳攸は慌てて目を閉じた。

(俺は今夜この男に抱かれるのか…?)
か…?)

そう考えたら、楸瑛が羽林軍で上半身裸で稽古していた姿や、自分がそんな逞しい楸瑛に鳴かされている姿が脳裏に浮かんで、ずくんと腰に来た。その瞬間に唇が離れて。

「ふぁ…っ」

切なげな声が漏れてしまった。

「絳攸…そんな声を出して…。あまり私を煽らないで欲しいな…」

気付かないうちに楸瑛の太腿に、自らの高ぶった熱の塊を押し付ける形になってしまっていた絳攸は、だあぁあぁっ!!と悲鳴をあげて飛びのいた。

「かかかか帰るぞ楸瑛ッ!」

情けないが前のめりの体勢で馬に向かうが、楸瑛に抱きしめられた。

「こんなふうになってたら、馬には乗れないよ」

くすくす笑う楸瑛を睨み付けてヤケクソ気味に怒鳴った。

「じゃあ貴様が何とかしろ!」

「うん、了解」

はてさて、この後の二人は。



end


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