短編
1
万物に終わりが来る事は幼い頃から知っていた。幾つも見てきたから。
そしてそれはどうにもならない事を知っている。
どんなに懇願しても、泣き叫んでも、祈っても、逝っていってしまう、消えていってしまう、去っていってしまう。
慈悲なる微笑みを称えた神は残酷にも連れ去っていくから。
それは突然のこと。
知っていたのに。なのに何故、想いを告げなかった?
この胸の内にある苦しい想いをどうすればいい?
もうアイツはいない。
ならアイツの墓の前に跪ずいて告げればいいのだろうか。
“好きだ”
“愛してる”
けれど無意味。
冷たい土の下にいるアイツに届かない。
涙一滴分も、届かない。
嗚呼、苦しい。
こんなにも苦しいのに、
お前は何一つわからない。
こんな感情を抱くくらいならいっその事、想いを忘れてしまった方がいいのかもしれない。
けど代わりに俺は一生、人を愛することが出来なくなるだろう。
それでも別にいい。
お前がいなくなったこの現実で人を愛せる自信がないから。
だから俺はお前に別れを告げる。
“お前を愛していたよ”
―――愛しき君に捧げるは燃える様な紅い花束。
End
→後書き
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