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短編


「ねぇ絳攸、今日は七夕だね」

「ああ、そうだな」

「今夜うちに来て天の川を見ない?」

「しょうがない、付き合ってやる」

「本当?じゃあ夕方に吏部に迎えに行くから」


―――そして夕方


「迎えに来たよ、絳攸」

「…………」

「どうしたの?」

「……すまん、いきなり仕事が入った。だから今夜は無理だ」

「…もしかして黎深様?」

「ああ。あの後いきなり大量に書簡を持ってこられてな」

「…この前もそうだったよね…」

「本当にすまん…」

「気にしないでいいよ」



吏部からの帰り楸瑛は天の川を見上げながら、ふと思う。

例えば

彦星が自分で

織り姫が絳攸で

一年に一度しか逢瀬を許さない神が黎深だとしたら


(冗談じゃない!)

神が黎深となると…とてもぞっとする。
多分自分達には一度も逢瀬を許してはくれないだろう。
勿論天の川を泳いででもどんな手を使ってでも絳攸に逢いに行くつもりだけど。

(時と場合によっては、一年に一度しか逢えないあの二人よりも私たちの方が逢うのが難しいかもしれない)

自分で考えた事にも関わらず楸瑛は重たい空気を纏いながら屋敷に帰って行った。




―――そんな地上の恋人達の遥か上に天の川は浩々と光る。今頃天空の恋人達は逢っているのだろうか?




元拍手御礼文でした。


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