main_10|11|26 アダムとその愛猫(天戦)1


18歳未満閲覧禁止。
これの続きです。
飼い主×半人間な猫のパラレル
特殊です、注意。

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にゃあ、と猫の声がして、ドアノブに掛けた手が止まった。
今のは、うちの猫の声じゃない。…昔は猫の鳴き声なんて全部一緒じゃねえかと思っていたが、飼ってみれば違いが案外分かる様になるものだ。
そして今のは明らかに聞いたことのない鳴き声だった。つまり見知らぬ猫が部屋の中にいる、という事だ。

(…まさか、浮気、なんて事は…)

きゅっと心臓が縮む、様な感覚が胸に襲い掛かる。部屋の中にいるであろうペット兼恋人の猫の顔を頭に思い浮かべながら、そんなはずはないだろうと嫌な想像を追い払う。でも、彼は猫だ。…人間よりは同族がいいのかもしれない。
(いやいや…戦人さんに限ってそんな事…)
浮気なんてする人じゃない、と思う。うん、絶対そうだ。人じゃないけど。第一わざわざ俺が帰ってくる時間に浮気してるなんておかしい。だから浮気じゃない。…多分。

情けなく震えそうな手を誤魔化し、意を決して扉を開く。立て付けの悪い扉はぎいい、と小さく嫌な音を立てて開いた。


「…あ、十三、お帰り」


迎えくれた声が、想像していた昼ドラの浮気現場を見付かってしまった人妻のような焦った声色ではなくてほっとする。それも束の間、次の瞬間目に入ってきた光景に一度脳がフリーズした。

にゃあ。見知らぬ子猫が、人の姿をした彼の膝の上で鳴いた。

…は?



「……人間と猫で子供ってできるもんなんですね」


呆然と呟いた俺を見て、彼は盛大に吹き出した。













「出来るわけないだろ、第一男同士だし」


あまりにおかしそうに笑われたので、少し恥ずかしくなると同時にほんのちょっと、腹立たしい。浮気されてるじゃないかと、俺がどれだけ不安になったと思ってるんだろう。
そんな俺を余所に、彼は子猫を中に入れた経緯を話し始めた。外をぶらついていた所、捨てられたこの子猫を見つけて、思わず連れて帰ってしまったらしい。ちゃんと風呂場で洗ったらしく、子猫の毛はまだ少し湿り気を帯びていた。


「…なあ、こいつもここで住んじゃ駄目か?」


やっぱり、そう来たか。予想の範疇のそれに、くらりと一瞬立ち眩みがした。


「…駄目です」
「どうしても?」
「そんな目で見ても、駄目なものは駄目ですからね」
「ちぇ…」


あーあ、やっぱり駄目だってさ。彼は膝の上の子猫に向かって残念そうに言う。恐らく駄目元だったのだろう、彼の表情に深い落胆の色は無い。


「なあ、じゃあ飼い主が見付かるまで、ここにいさせてくれよ」
「…まあ、それくらいなら構いませんよ」


こんな小さな子猫、外に放り出せば鴉やら何やらの餌食になってしまうだろう。飼い主が見つかるまでくらいなら仕方のないことだ。…うん?それってつまり、俺が引き取り手を探さなくちゃならないのか?


「いいってさ、良かったなー」


嬉しそうに子猫に話しかける彼を見てしまえば、もう断ることは出来なかった。















しかし俺は元々、猫に限らず動物全般が好きではない。嫌いとまではいかないが、好きかと聞かれれば答えはノーだ。基本的には興味関心一切無し。戦人さんを除いては。
…だが、これは、猫と言う生物を嫌いに為らざるを得ない。嫌いだ。というか、…邪魔だ。

(何だ、この状況)


戦人さんは子猫を構ってばかりで、一切俺に寄って来てくれやしない。さり気無く戦人さんの足を舐めるな、畜生。俺だってそんな所舐めさせてもらったこと無いのに。
ふつふつと湧き上がる怒りと殺意を隠しきれていない俺に、彼は気付いているのだろうか。…絶対気付いて無い。


「……鈍感、ですよね…本当に……」
「んー?何か言ったかー?」
「はあ……いーえ、何にも?」





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