close to you
04
よく、見れば…いや、よく見なくても相坂は格好が良かった。
寝ぼけていたせいか、その朝の俺はそこに特別気を取られなかった。
数週間もすれば相坂はあっという間に人気者へと成り上がった。
無愛想なのに、好かれてて。真面目じゃないのに頭が良かった。
いつも気だるそうなその表情も、どこか哀愁が漂っていて不思議と惹きつけられるものが感じられた。
無口で、背が高くて、誰に対しても怯まないその態度。
そいつは間違いなく自分とは別の世界の存在だった。だからといって別に関わろうとも思わないし、思われもしないだろう。それでよかった。
絵に描いたような理想の人物に、女子も男子もこぞって相坂に興味を示した。
話しかけられるたび相坂は適当に相槌を打って、適当に返事をしていた。
それなのに人の波は一向に引かないものだから、俺はきっとこいつには何か超能力でもあるのだろうと思ったりもした。
あれから何日も経ったけど、相坂が俺のことを見たのは、隣の席にきたあの朝の一瞬だけだった。
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