close to you
07(side:直哉)
水無月。
なんでこんなにも雨が降る、視界が霞む、水ばかりの日々が続く月なのに、水が無い月と書くのだろうか。
この季節は、この月は、……雨は、嫌いだ。
…まあ、どうでもいいけど。
席替えをするという担任の一言にクラス中がうるさくなった。ただでさえ雨音がうるさいというのに、迷惑もいいところだ。
席替えなんかに興味は無い。むしろ何に対しても興味は無い。
ボーっと、頬杖をついていた。雨のせいか頭が少し痛む。
少し、イライラしていた。
「相坂くんの、隣になれたら嬉しいなあ〜」
声がして視線を向けると前の席の女子が俺に話しかけていた。
「……ん?」
聞こえていたけどあえて何も聞こえていないフリをした。面倒くさかった。
「どうしたの?元気ない?」
「別に、気にすんな」
「そっか〜」
嬉しそうに少し赤くなる頬に嫌気が差して、なんとなく隣の席を見た。
目が、合った。
俺が転校してきたあの朝、以来だった。
厭世的な目をしている。それが大野壱の第一印象だったのを思い出す。
「帰りのショートでくじを引いてもらうからな!じゃあ今日も一日頑張ろう!号令!!」
担任の大きな声が響いて、大野は俺から目を逸らした。
席替え、
思えばこの席はなかなか楽だったように思う。
隣の席の大野は全く話しかけてこないし、クラス特有の盛り上がりはほとんどが中心部で繰り広げられていたから、俺は参加しなくてすんだ。
おかしい話だ…。
ここに来る前までは、俺は進んでクラスのムードメーカーを務めていたのに。
もう、誰とも関わりたくなかった。
いつからこんなに、世界に興味を失ってしまったんだろう。
理由は分かるけど、明確な日にちは分からない。
気がついたら、流れに身を任せて生きていた。
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