miracle world
08


「だから俺が…」
「いい加減に…、で……」



…………。




「……あ、あのー…俺トイレ…」


いつまでもこうしてても埒が明かない。さっきから三人の攻防戦は10分ほど続いている。このままじゃ本当にただの時間の無駄だ。

三人とも美形だから見てるのが楽しくないわけじゃないけど、このままずっと三人見てるよりは校内探索してたくさんの青春というなの情事にシャッターを切ってた方が楽しそうだし頭がいい気がする!



「あー、そうやった。ほな俺が連れてく」
「だから俺がするっつってんだろ」
「俺が行く。お前等は仕事してろ」


ほらまたぁああぁあああああ!いいから!もう俺一人でいいから!むしろ初等部帰されても俺の席ねえからああああ!!


「あの、俺ひとりでいいです…、ごめんなさい。戻ります」


おずおずと会長の体から退こうとするが、会長はそれを許そうとはしない。

「いいからそのままいろ」




…かっこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!眩しい!!会長の、大人の色気が、はじけた!!


しかしその一瞬の隙をついて、副会長が会長の腕から俺を引っ張り出し、自分の肩に担ぎこんだ。激しいデジャヴなんですけどおおおおおお!!



「じゃ」



「あ、おい!」
「…ひっきょー」



そこで俺は副会長の驚くべき身体能力を知った。

たたたっと軽やかな疾走。ふたりの姿がどんどん遠ざかっていく。俺はたまらずそこで身を捩って写真を一枚撮った。ああかっこいいよ生徒会ハアハアどうせならこの副会長もあの中にいればいいのに!ていうか会計!今日は居ないのか!理由はなんとなくわかるけどさぁあああ!


「よう掴まっとけ」


瞬間、ぶわっと俺に襲い掛かる風。俺は溜まらずに副会長の制服をぎゅっとつかんだ。制服じゃかなり不安だったけど小さい俺には副会長の背中は大きすぎて掴むにつかめない。


ていうかなんという跳躍力だ!!6階から5階に降りましたよ今!!見た!?みんなちゃんと見てた!?

もうさっきの2人なんてとっくに見えなくなってんのに、あんたどんだけ俺をびびらせれば気が済むの!!



たんっと地面に着地すると、副会長は一瞬だけ息を吐いて、再び休むことなく走り出した。







暫くしてたどり着いたのは音楽室。

副会長は自慢のゴールドカードで華麗に鍵をあける。


あれれれれれー?これも激しいデジャヴなんだけどおおお!!


音楽室の中に入るが、当然の如くそこには誰も居ない。まあベートーヴェンさんとかバッハさんとかの肖像画は飾られてるけどね…

高そうなピアノを通り過ぎ、またしても奥に入るのか今度は準備室の扉をあける副会長。

たくさんの高そうな楽器が綺麗に収納された準備室の片隅、音楽室にあったものとは違うがこれもかなり高そうなピアノがあった。






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あきゅろす。
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