far memory
11



家についてから少しだけジンと喋った。ジンは面白くて、優しくて、いいヤツだった。俺はお前のこと、覚えてないけど、ていうか誰のことも覚えてないけど、それってきっとなんか意味があるんだと思うんだ。そう、思うことにしたんだ。



ピリリリリリ


突然鳴った携帯は、ジンの方だった。



「わり……もしもし?」

「…あっそ。なに、なんでそれいちいち俺にゆーわけ」

「はー?別にんなのもーどうでもいいっつったろ。お前等がやられようがやられまいが、俺には関係ねーし」

「…うっせーな、わーったよ」



「…と、もだち?」
「んー…ま、そんなとこ。でも、レベルでいったらしのぶのほうが全然大事だな」

「行くの?」

「どーしよ」


トモダチ。


俺は携帯を開いて、先日きた二人の男子を確認した。


どっちも、いいヤツだった。

すげえ、いい奴等だった。


俺はそいつ等をだました。自分の勝手な都合で、俺が忘れてるからって、お前等にまで俺を忘れて欲しくなくて、必死で取り繕って、

もしかしたら気づいていたかもしれない。

それをあえて、気づかないでいてくれたのかもしれない。


……いや、それは、あの二人に限ってはないか。


そんなことを思っていたら、俺は笑っていた。


トモダチって、大切だ。

俺に笑顔をくれる。



「行けよ」

「えー」

「えーじゃなくて、呼ばれてんだろ」

「だけど、しのとせっかく喋ってんだろ?」

「俺は……俺はいつでも、」


「行きたくねーよ。だって今のしの、俺がちょっと目ぇ離した隙に、俺のこと忘れちゃいそうだもん」




俺は、



「…しの、おれ、しのが好きだ。こんなキモチ、生まれて初めてなんだよ」


おれ、は




「…わり。今のルール違反だな…。うん、わかった、行くよ」
「ジン!!」


俺は立ち上がったジンに素早く手を伸ばして、腰に抱きついた。

「忘れ、ねーから」

「しの…」

「ぜってー、忘れねーから。また来いよ、ぜってー来いよ」

「…いやっつわれても、来るよ」



くしゃくしゃっと頭が撫でられて、数秒後、俺はひとりになった。


でも、ジンのぬくもりが頭に残っていた。



ジン。

神尾仁。


俺と同じ名前の人。



読み方は、違うけど。

ひとつも俺と似てるとこなんかないけど、



でも、なにか、どこか、俺は繋がってた気がした。









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あきゅろす。
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