far memory
15
幸太が自室に戻り、ジンも部屋を出て行った。一人になった俺は早速ベッドに寝転がり煙草を吸い始めた。灰皿はスタバのキャラメルなんとかのビン。大量の煙草が押し詰められているそれは最早水が機能していなかった。
そろそろ代え時…。灰皿はいちいち捨てんのがなんとなくめんどくせーからやっぱビンかペットボトル。でも買い行くのめんどいし、わざわざ家まで持ち帰って部屋で飲むとかあんましねえし…。
…そうだ。このビンだって、楽が持ち込んだもんだった。
満タンになりかけているビンの淵に、軽く煙草をたたいて灰を落とした。
そのときまたドアが開いて、ジンが入ってきた。
「…なに」
「なにって、シノブと仲良くなろうと思ってなー」
「無理」
「いーだろ。仲良くしよーぜ」
すたすたとこっちに向かってきて、ベッドに腰をかけたジン。頬を引きつらせながら死ねと呟いたら何故か楽しそうに奴は笑った。
「また煙草吸ってんだ。早死にするんじゃん?」
「別にいーし。関係ねーだろ」
「俺シノブに早死にして欲しくねーけど」
「…あーそうですか」
なんとなくバツが悪くなって煙草を淵に押し付けて消火し、落下させた。
「偉い偉い」
頭を撫でてきたジンに抵抗するのがめんどくさかった俺はされるがまま。それをいいことに抱きついてきたときには流石に蹴って突き放したけど、
悪くなくて、
それはきっと、本当は誰かに傍に居て欲しいから。
「つーかそれもう入んねーんじゃん?」
「あ…や、……でもまだいい」
楽が思い浮かんだ。へらへら笑いながら、俺にこのビンを押し付けてきた楽。結構うまいらしーとか言って。
甘いの苦手なくせになんで買ってんだって思ってた。家に着いてから、俺に買ったってことが判明して、俺はこっそり喜んだ。
訝しげに俺を見るジンだったが、数秒後に大声を上げて俺をビビらせた。
「…っんだよいきなり!!びびるだろ!」
「や、アレじゃん!今日ワンピースの発売日!」
「だからなんだよ」
「買い行こー」
「一人で行けよ」
「俺とシノブの仲だろ」
俺はなんだかんだ押しに弱い。あと、誘われるのもいっつも断れない。
「わーったよ。行きゃいーんだろ行きゃ」
「やー、嬉しいよシノブくん」
肩をポンポンと叩いてくる手を振り払いながら、俺とジンは家を出た。
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