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エレジーコレクション
8.魂の絆

今日も、いじめっ子政宗にからかわれた。

まだ新しい環境に慣れていないせいか、放課後になるとグッタリ……。

情けない。

けど、慣れるまでの辛抱、だよな。
早く家に帰ってゴロゴロしよう……。

校庭で元気に遊ぶ子供たちには目もくれずに足を進めた。




門を出ると同時に、黒塗りの高級車がやって来て門の横に止めた。
運転席のドアが開き、降りて来たのは……スーツを着た、大柄な男。

ぼんやりと様子を見てた俺は、その男と目がバッチリ合ってしまった……。




あ……。

「!?!!」










……竜の右目……。




片倉小十郎、だ……。










向こうは微動だにせず、俺を見ていた……。
って言うか、すっげ見られてるっ……!
ど、どうしようぅぅ……。

ふたりは、その場で固まった。




「…Hey 小十郎! 何、突っ立ってんだ?」
「ボケたんじゃねーの、片倉〜」
「っ?!」

後からやって来た伊達コンビに、小十郎はハッとしていた。

「何やってンだ小十郎…。このままじゃ、いつまでたっても帰れねぇぜ?」
「はっ……申し訳ありません、政宗様。只今……」

小十郎が後部座席のドアを開ければ、伊達コンビが乗り込む。

……車で通ってるのか。
しかも運転手は、あの、片倉小十郎。




魂の絆……って言うのか?

……すごいな……。

あの人のことだから、今生も伊達家に命張ってんだろうなぁ〜……きっと!




黒塗りの車が走り出す頃……俺も、マンションへ向かい歩き出していた。










魂の絆、か……。














「……小十郎」
「はっ」
「気になったか?」

バックミラーには、口角を上げ楽しげな表情の政宗様が映っている。

「何のことでしょう?」
「とぼけんなよ。昨日話したぜ? 四国のド田舎から出て来た転校生…。さっき見てたろ?」
「……はぁ……」
「小学生なのに銀髪だぜ? ブスだぜ? アレは、化け物…いや妖怪だ…。間違いねえ」
「…………」

相手をけなしながら、目を細め笑っておられる。
育て方を間違えたか…?

「肌は白いし、目の色はうす〜い青だし、ガイジンっぽいよな〜、政宗〜!」
「…Ha! いじめ甲斐があるぜ……」
「?!」

ミラーの中の隻眼が、ギラリと光った。

獲物を見つけた時の目だ。

「政宗様…。いじめは、この小十郎が許しませんぞ…!」
「! いじめっつーのは言葉のあやだ……。そう、独りぼっちの転校生を構ってやってンだよ……!」
「ほう? それは、お優しいことで」
「…………」

やれやれ。
見苦しい言い訳を……。
目が泳いでますよ。




……昨日から、どこか落ち着かないご様子だった。




なるほど。

理由はそれか……。

政宗様は、銀色の転校生を気に入った……と、そう言うことだろう。




好きな子ほどいじめてしまう、困った癖を持つ政宗様だ……。

幼稚園に通われている時から、何人女子を泣かせていることか。
何とかして、その悪い癖を止めさせなければ。

お気に入りの転校生に、嫌われる前に。

「……政宗様。か弱き女子をいじめることは、武士道に反しますぞ。肝に命じますよう……」
「Ah? アイツは男だっ!!」
「なに怒ってんの、政宗?」
「! あぁ……。男子、でしたか……そうでしたか…………」




この世のふたりは、同じ時代に、同じ男として生まれ……

必然のように、出逢った…

そして……あの頃同様、政宗様は彼に惹かれている。










銀色の転校生は……坊やの……生まれ変わりだ。




長曾我部元親……。




まだまだ幼い顔立ちだが間違いない。
纏う雰囲気が同じだった…。




あの頃と異なる点をあげるとすれば、

政宗様と同年代と言う事と、両の眼が同じ青灰色だったと言う事くらいか。
女子と見間違えはしたが……男子だと聞いて安心したような、少し残念なような……。

あれは将来……絶対に美人になるぞ。

……と、そうじゃねえだろ。










向こうは、覚えているのだろうか…。

前世で、俺達が出逢っていたことを。










優しい鬼…。

いや、

優しすぎる鬼だった……。






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あきゅろす。
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