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エレジーコレクション
7.未練

ノックもせず俺の部屋に入って来た元就は、着物姿だった。

胡座をかいて座る元就に呼ばれ、俺は彼の膝の上にちょこんと座っている。
布越しでも、背中に感じる温もりが心地良い。




「……元親」
「ん?」
「新しい学校はどうだ」
「うっ? ……うん……。……あのね、逢えたよ……」
「ふん。そのわりには、浮かない顔をしているようだが」
「……う?」

顔に出てた??

「でも…うれしいんだ。同じクラスだし!」
「…………」
「あー、えっと……政宗、な。…前世の記憶、無かったよ……」
「そうか。…それが普通であろうな」
「……うん」

元就の言う通りだ…。

それが、普通なんだ…。










なぁ、政宗……。
昔のおまえに訊きたいことがあるんだ。

…政宗は俺のこと、どんなふうに思ってた…?
いつも愛の言葉を囁いていたけれど……本当は……本当は、どう思ってたんだ?

心の底では…やっぱり気味の悪い奴だと思ってたのか?

気持ち悪い奴だと思ってたのか?




……ごめん……疑って……。

俺って、サイテーだな。

けどさ……。

政宗が俺をいじめるのも…悪いんだぜ。




昔よりも、いっっっぱい好きなだけ甘えさせてやろうと思ってたのにさ…………おまえ、いじめっ子だし、楽しそうだし…………。

この世の政宗に、俺の想いは必要ないんじゃないかって……。
そう、思って。

だとしたら……。

政宗に……俺は……必要ないってことで……。

…それじゃあ、俺は…。

俺は……。




俺は

何のために

前世の未練を引き継いだの?




おれは

なんのために

うまれかわったの……?










…………答えは、出ない。










前世からの想いが宙に浮く。










……なんか、今日はすごく疲れたな……。

元就に身体を預けると、彼の手が俺に巻き付いてさらに密着した。
まだ小柄な俺は、元就の腕の中にすっぽりと包まれてしまった……。

でも……。

あったかい……。
あったかいよ、元就……。

この温もりに、俺は救われているのだと……つくづくそう思う……。




特に会話がなくても、気分は良好。
むしろ、これが俺達にとってごく普通のことで。
このゆったりと流れる時間を、お互い楽しんでいる。

……この世の俺達はもう、国を背負うことも、殺し合うこともしなくていいのだから……。




……ここは、昔夢見た、戦の無い世界……。










「元親…?」
「………………」

安心しきっていたのだろうか。

俺はいつの間にか、元就の腕の中で眠っていた……。




子供の俺にとっての元就は……とても、とても大きな存在だった……。










「眠ってしまったか。まだまだ子供よ……」


「…………愛しておるぞ、我が姫よ」


「例え、この世の全てが汝を受け入れずとも、我だけは愛し続けよう……」










「姫は、永遠に、我のもの。今も……昔も……汝は我のものぞ」










「……弥三郎……」






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あきゅろす。
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