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エレジーコレクション
6.想い人

「さぁ、自己紹介して」
「……長曾我部…元親、です……」
「Ahー? チカァ〜?」

政宗……?

「……チカだってよ! やっぱオンナだ、ババアだ! Hey! ババチカって呼んでやるよ、ハハッ!」
「こらっ! モ・ト・チ・カ・君っ、だっ! 男の子!!」

…………。

……だめだこりゃ。




政宗には、前世の記憶が無いって事がわかったんだ…。




にしても……ヤンチャ過ぎだろ、政宗……。










休み時間――

「?! いったっ……」

突然、髪を引っ張られた。

「見ろよ、成実。シラガの小学生だぜ〜!」
「って言うか、銀色じゃねーの? 政宗ー」
「どっちにしてもキモー―」
「っ……」

髪掴んだまま揺さぶる政宗。
いってぇ!
何すんだよぅ…!

「Hey! 下向くんじゃねーよ! 顔見せろ、クソ女!!」
「っっ……」
「…………Ha! ブー――ス!!」
「………………」

この日から、俺は想い人にいじめられる…。




せっかく想い人に逢えたのに…。
なんだろう、この仕打ち…。

ちょっと……哀しい……。




けれど…俺をいじめる時の政宗は、酷く楽しそうに……




……笑うんだ……。










俺の前世からの想い人……この世の政宗は、とてつもなくヤンチャないじめっ子でした……。










休み時間ごとに政宗と一緒にふざけあってる男子、成実って……昔、政宗の従兄弟だったヤツだろうか?

確か……朝に前田先生が言ってたっけ、『伊達コンビ』って。

伊達政宗と伊達成実…同級生ってことは…。

「……双子?」
「What! 馬鹿だろアンタ。似てねえだろうが! 成実は、俺の子分だぜ」
「ヒデー政宗! 従兄弟同士だろ! 子分って……」
「俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。文句あんのか? あぁん?」
「ゔゔぅー――……」

ヒデー政宗。
どんだけジャイアン気質……。




休み時間になる度、廊下に人が集まって来る。
今も遠巻きに…俺を盗み見てるんだ…。

まるで、見世物の動物かなんかだな…。




「あの子、外人?」
「白人系? どの国かな…北欧とか?」
「女の子? …え、ちがう? …あ、本当だ、制服男子だ…」
「アレ、地毛らしいぜー」
「うわー、キモー!」
「化け物じゃん…」
「やだ、夢に出そう…! 見なきゃ良かったーっ」




「ヒュ〜ウ♪ 有名人じゃねーか、ババチカ〜」

…またそうやって、人をからかう…。
どこまで俺のこと嫌ってんだよ、政宗…。
悲しくなるだろ…。

ただでさえ、精神的ダメージ大きいのに……これ以上、傷を抉らないでくれよ……。
頼むからさ……。

「有名になれて嬉しいだろ、ババチカ〜ッハハッ!」
「……その、ババチカっての…やめてほしい」
「Ahー? だったら、小学ババアとブス、どっちがいいんだー?」
「………………」
「政宗ってネーミングセンスねーのなー」
「Shut up! いいか成実…こんなヤツのnicKnameには、これくらいが丁度良いんだよっ!」

まさむねー……。
なんだよちくしょう……。

「Hey! 答えろよ!」
「ブスでいい」
「……Ha! ブゥゥー――――ス!!」
「……………」

人の悪い笑みを浮かべる政宗。
けれど、それは決して暗いものでは無い。

いじめるのを本当に楽しんでいる……そんな感じだ。




心の底から無邪気に笑える政宗が見れるなら……このままでいいのかも知れない。










前世の未練が強く残る今の俺は、そう思った…。






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