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エレジーコレクション


†††






盆の終わり…。


我は、庭から何かの音を拾った。




…実のところ…コレは、昨日も聞こえておった。

外に出るのも億劫で、そのまま放置しておったわ…。




この屋敷は、我にとって思い入れのある場所故…極少数のものしかおらぬ。

部屋に近寄らぬよう、人払いもしておった。


何時、あやつが現れても良いように…とな。


…ふん…。
あやつが来なければ、何の意味もなさぬではないか。








…面倒ではあるが、我は重い腰を上げ、庭へと向かった。








音の鳴る方へ…。






†††






手入れの行き届いた庭に似合わぬ、今にも事切れそうな…鳴き声…。


緑茂る紫陽花の下…。
そこに、鳴き声の発生源があった。








それは、痩せて汚れたみすぼらしい仔猫であった。


ぴぃぴぃと、か細く鳴く灰色の仔猫は、よく見れば左目が潰れておった。
烏か何かに襲われたのであろう。
…弱肉強食の世故に、致し方あるまい…。








気が付けば、我はその仔猫を手に、屋敷へと連れ帰っておったわ。








薄汚れた仔猫に…誰かの面影を、重ねてしまったのであろうか…。








「…生きるか死ぬか…。我がこの目で見届けてやろう…。万が一、生き残るような事があれば…我が飼ってやってもよいぞ…」








仔猫は、みぃ…と鳴いた。








精々、足掻くがよいわ…。






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あきゅろす。
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