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エレジーコレクション
14.隠された想い

元就は過保護だ。

まだ微熱が残ってるけど、最初より随分楽になった。
それも元就のお陰なんだけど…。




元就は過保護だ…。

俺が熱を出してから、ずっと傍に居る。
一度も出社せずに、ケータイやパソコンで指示を出しながら…。

けど時々、ケータイの相手に……使えぬものめ……って、言ってんだ。




俺なら、微熱くらい平気なのに。
もう、学校行けるって言っても……まだ早い……って…。

元就は今も傍に居る。










ほんとは
うれしいんだけどね…。




元就には、ひみつ…。












……元親……

貴様は知らぬのだろう…。
熱に浮かされ、我の名を何度も呼んでいたことを……。




我を…求めておるのだろう?




……弥三郎……












昔……




我は、ずっと隠しておった。
……我の、本心を。
心の底では、貴様が欲しくて欲しくて仕方なかった。
だが、我はその気持ちを隠し続けた。

冷徹非道と言われる我が…
鬼と呼ばれる男に
溺れていたのだ……。

……言えなかった。
伝えられなんだ……。




幼い頃は、臆することなく伝えられた愛の言葉…

『愛しておるぞ…弥三郎…………いつまでも……』

まだ、幼名で呼び合っていた頃であったか…。




しかし
戦乱の世は、簡単に我等を引き裂いた……。

土佐では土佐の、こちらではこちらの戦が起こった。




そして……

10年以上も逢えずに
時は流れた…。










再会を果たしたのは
無情にも、戦場……。
互いに大将の立場であった。

互いに互いが判らぬほどに
姿形声性格……
全てが変わり果てていた…。




そう思ったのだが……
奴は……

やはり、優しい弥三郎のままであったのだ……。




互いが松寿丸と弥三郎だと気付くと、元親は我と戦う事を嫌い同盟を結びたいと申してきおった…。
弥三郎らしい考えだ。

…だが、奴の家臣には猛反対されたそうな…。
それを押し切っての訪問だった。

我も本心では、かつて愛した姫と戦う事は望んでおらぬ。

しかし……

我は……非情な言葉を投げ掛けておった。




『…大人しく、我にその身を捧げるがよい』




『断れば、同盟の話は無し……抵抗しても、即破棄する』




愛の欠片も無い…
酷い言葉であった…。




それでも元親は……




静かに頷いたのだ……。




『それで…かまわねぇ……』




今にも泣きそうな顔をしておったわ…。




嗚呼……
我だけが…
変わってしもうた……。

毛利家のため、民のため、泰平の世にするために…兵を駒と割り切り、中国地方を治めた。
兵に情をかけてしまえば、判断を狂わすだけ…。
国主たる者、常に冷静に状況を見極め、正しい決断を下さねばならぬ。

故に、我は、昔の甘い考えを捨て……

……そして

氷の面を被ったのだ……。




その氷の面を付けたまま……我は一度も愛の言葉を紡ぐことなく……奴を、抱いた。

何度も、何度も…。

我の本心を悟られまいと……乱暴に……手酷く……。

本心を知られてしまえば……我は弱くなってしまう……と、心のどこかで怯えておったのだろう……。




そして、我は……










何よりも欲していたものを……失っていたのだ……。












勿論…後悔しておった…。

後悔の中……
この世で
再び巡り逢えたのだ。




……愛しの、姫君と……。




両親を亡くし辛いであろうが、我はこの機会を逃しはせぬ……。

『政宗に逢いたい』

と言う、現世の元親の望みを叶えてやった。

しかし……
我は、引く気などない。

前世で果たせなかった想い…この世で果たして見せよう。










「愛しておるぞ、元親……」
「……う? …うん…っ」

小さな声で返事をすると……ぬいぐるみと共に頭から毛布を被ってしまった。

わかりやすい照れ隠しよ。
その様な反応を見せるとゆうことは……

……我に勝算有り、か?




元親を、我のもとへ繋ぎ止めるために…今日も愛の言葉を紡ぐ。




「……愛しておるぞ

……いつまでも……」










元親は…
もう、誰にも渡さぬ。




現世の元親は

我だけのものよ……






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あきゅろす。
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