エレジーコレクション
11.泣かす
「あ。わかった!」
「Ah〜? なんだよ成実。唐突だな……」
政宗様はリビングのソファで、白銀のロングコートの愛猫を愛でていた。
その様子を見ていた従兄弟の成実が、突然の発言。
「ソックリだな!」
「話が見えねぇよ……」
「あの銀色の……何かに似てるな〜って、思ってたんだ」
「Ahー? 銀髪ブスがナンだって?」
「その猫にソックリだな!」
「What?!」
……言われてみれば……。
似ているかも知れない。
鼻筋の通ったシュッとした美人顔。
柔らかで光を反射する毛並み。
瞳は淡いブルーと金色のオッドアイではあるが。
にっ……似ている……!!!
「Shit! 俺の大事なpartnerをあんな妖怪ブスチカと一緒にすんじゃねー! バカ成実!!」
政宗様の愛猫は、政宗様御自身でお選びになったのだ。
前世の記憶を引き継がなかった政宗様ではあるが……魂が自然と、あの銀色の鬼を追い求めていたのかもな……。
「バーカバーッカバカ成実!!」
「ヒッデー―ッ!!!」
「政宗様……。あまり成実をいじめなさるな。それと…」
「小言はいらねーぞ!」
「いいえ、言わせて戴きます。転校生のことをブスなどと、心にもないことを言うものではありませんぞ!」
「Σなっ…………!!!」
「オレも正直、どの変がブスなのかわっかんねーよ。なー、どの変がブスー? 」
「うっ……うるせーうるせーうるせぇぇぇー―――っ!!! アイツはブスだ! どこからどこまでもブスなんだっ! 超ー―ブス!!!」
「何ムキになってんの??」
全力で否定をしても無駄ですよ。
政宗様があの坊やを大変気に入っていること、この小十郎既にお見通し…!
「政宗様の方が、性格ブスになられてますぞ」
「What? 小十郎てめー……ケンカ売ってンのか、上等だァー――ッ!!」
「そのようにすぐ心を乱していては、嫌われてしまいますよ」
「Σ好かれたくねぇぇーっ!! もう……ぜってー泣かすっ! 銀髪ブスッ!!!」
「政宗様っ!!!」
やれやれ……。
本当に、困ったお方だ……。
「くっそー、ブスチカのせいで……。マジ泣かす」
そうだ……
あの銀髪ブス……
ぜってー泣かす!
泣かして
それで……
それで……?
俺は
アイツを
どうしたいんだ……?
つーか……
なんでいつもアイツのことばかり考えてンだ……?!!
……ぐああああっ!
何だよコレ!
俺の頭の中からアイツが離れねぇ…!
あンの妖怪ブスチカめ…!
この俺に、妖術をかけやがったな?!
やっぱ、退治するしかねえ!
ククク……。
明日、思いっっ切り泣かしてやるぜ……!
「政宗様…。何を企んでおいでですか?」
「Σ?!!」
……勘のイイ奴め……
「いじめは許しませんぞ」
〜〜〜〜〜っ!
「……ああ、政宗様」
「んだよっ!! まだ泣かせてねえっ!!!」
「…………戴いたハンカチの件で……!」
「……Ahー…」
やべえ……青筋、青筋…。
「血で汚してしまわれたので、クリーニングへ出してお返しするよりも、新しいものをお贈りした方が宜しいかと」
「Σ……!」
何言ってんだ小十郎……!
これから泣かす相手だぞ?
そんなヤツにpresent…?!
矛盾してるぜ、矛盾……!
「……礼儀を軽んじることは、輝宗様もお怒りになることでしょう」
「〜〜〜っ!」
ここで親父出すなよ…!
「後日……。習い事のない日にでも、お贈りするハンカチを見に行くことに致しましょう」
「?!!!!」
なんか……やべぇぞ…っ!?
このままじゃ、やべぇぞ俺!
ブスにpresentなんて、冗談じゃねぇぇー――っ!
余計なお世話なんだよ!
小十郎も……
ブスチカも……!
くっそ〜〜〜
ぜってー泣かす…!
泣かす泣かす泣かす……!
まず、泣かす…っ!!!
すべては、それからだ!
次の日……
妖怪ブスチカは
休みだった……
「Why?!!!」
「…残念だったな、政宗」
なんでこうも上手くいかねぇんだ……っ?!
ズル休みだったら、朝から晩まで泣かすかんなっ!
覚えてろよ…っ!
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!