SHOUT−シャウト−
第1章(11)
「そうか、おまえもリオのファンなのか」
秋山が那音の肩を抱きながら笑みをみせる。
「コイツの部屋すげぇんだぜ。こぉんな大きなリオのポスターが貼ってあってさぁ」
興奮したように田辺が大きなジスチャーをつけた。
そんな三人を眺めながら草薙はジッポの火をつける。
紫煙をくゆらせながら草薙の手は那音のギターをなぞる。
「この傷」
草薙がネックの先にそっと触れる。
「リオのギターにもあったな」
草薙の言葉に那音の目が見開かれる。
「え?そんな細かいところまで!すげぇレプリカだなぁ」
田辺は草薙の横へと移動すると那音のギターを間近に見る。
「ち、ちがうよ。それはぼくが間違ってぶつけちゃった傷だから。ほら、リオのにはないよ」
そう言って那音が胸ポケットから取り出したのは生徒手帳にはさまったリオの生写真。
「おおおっ、さすが。こんなもんまで持ち歩いているんだ」
田辺が那音からその写真をとりあげる。
「やっぱカッコイイなあ、リオは」
それはギターをかかえたリオの写真。スタジオで撮られたものはライブ会場で売られていたものであろうか。
「おまえこんな昔のものよく手に入ったなあ」
秋山も覗きこむ。
「うん、うちの母もリオのファンだったから」
「ああ、親子二代でファンかよ」
そんな三人の様子を紫煙の奥から見つめる草薙。
そう、生前のリオのギターにはなかったのだその傷は。
その傷を草薙が見たのは去年のライブビデオ。その時リオのギターをかき鳴らしていたのはリナとよばれる少女であった。
「な、なんだ!!」
突然草薙の部屋のチャイムが鳴る。
しかも連打の嵐のうえにドンドンと扉を叩く音さえする。
「ま、まさか」
那音は嫌な予感がした。
草薙と秋山は顔を見合し眉間を寄せる。
田辺にいたってはあっけにとられたままだ。
仕方ないとばかりに草薙が重い腰をあげる。
「ナギさんぼくが行くよ」
その草薙を制するかのように那音が立ち上がる。
那音が鍵を開けるや否や雪崩れ込んできたのは。
「真兄!宗汰」
思ったとおりの人物だった。
真治にいたっては那音の顔を見るなり自分の胸に抱きこむと、キッと部屋の中の草薙を睨みつける。
「草薙!うちのナオをどうするつもりだ」
胸の那音を背後の宗汰に預けるとツカツカと中に入り草薙の胸倉をしめつけた。
その真治の手首をギュッと掴んだのは秋山。
「他人の部屋にズカズカと入り込んでの乱暴狼藉。生徒会長サマなら許されるとでも?」
飄々とした口ぶりとは反対にずいぶん物騒な目つきであった。
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