I don't know 2ページ 屋上で洋平は流川の腕に抱かれていた。 向こうに見えるグラウンドでは体育の授業が行われている。 流川とはあれから恋愛とかそういった類いではないがなんとなく関係をしている。 さっきから変わることなく、ただ洋平を自分の腕に抱き留めているだけで何もしていない。言葉さえ交わさない。 「‥‥なあ、あんた人呼び出しといてコレ?」 上を見上げ、後ろにいる流川に洋平は話しかけた。「いいけどさあ」 ただ人肌が気持ちよくって眠ってしまいそうだった。 目蓋が時たまくっつきそうになる。 流川の返事はない。 もう慣れてしまったからそう答えを求めようとも思わなかった。 ただ眠気が洋平を襲っていた。 「‥‥‥」 腕の中にいる洋平を見た。 流川の胸に体をすっかり預けて洋平は眠っている。 流川の腕に顔を埋めるようにして寝ている ―――あの時、無理矢理に体を奪ったきっかけは忘れてしまったが衝動だった。自分の側に置いときたいという一種子供の執着心みたいなものかもしれない。 何故、自分の側にいるのだろう。 何故、あんなことをした自分と続けているのだろう。 と流川は洋平の横に傾き見える顔をじっと見つめながら考えていた。 そして、自分はというと"好き"という感情はあるがそれが"愛"だの"恋"だのとは違っていると思った。 と思っていた。 パチリと洋平が目を開けた。 「‥‥ぁ、悪りい」 流川の姿勢は寝てしまう前と少しも変わっていなかった。 チャイムが鳴り騒がしくなりはじめた。 流川の腕が離れた。 洋平は流川を見上げた。 「あんたよく眠ってたよ」 流川はすくっと立つと屋上を出ていった。 それと入れ代わるように生徒が入ってきた。 「‥‥え、あ‥‥昼‥‥」 教室に戻ると「何やってたんだ」と花道が怒鳴ってきた。 「ちょっと、昼寝」 しばらくして大楠たちがやってきた。高宮がビニール袋の手提げを持っている。 「おお、やっときたか」 花道は机に袋が置かれると自分が注文した物を取り出してパクつきはじめた。 「洋平、お前三限も四限もサボりだって?」 袋の中を物色していた洋平は大楠に聞かれた。 「なんでお前ら知ってんの」 野間がガッついている花道を指差した。 「いきなりやってきてよ、洋平知らないか?だからな。こいつ。洋平のお守りじゃねえっちゅうの」 大楠が話す。 それに笑ってみせる洋平。 「こいつ、人が心配してたっつうのに昼寝してたんだぜ」 花道が文句をたれる。 「わぁーった、わぁーった。新しいゲーム、手に入れたからそれでチャラ。な」 皆はいいないいなと花道を羨ましがる。 「人徳人徳」 花道は胸を張る。 洋平は思わずため息をついた。 「洋平、約束だかんな」 バッグを肩に下げて念を押す花道。 「へーへー」 「あっ、それから特訓あんからよ」 「へーへー、なんでも付き合います」 あんぐりとはしながらも手を上げて宣誓をする。片手はポケットに入れたまんまだが。 花道が教室から出るとどっと疲れが出て、嘆息をもらした。 タバコが吸いたいと思う洋平だった。 体育館見学組は洋平一人だけになっていた。 野間たちは新しく開店したパチンコ屋に行くんだと早々に引き上げてしまっていて、晴子たちも暗くなるからと帰ってしまった。 足元にボールが転がってきた。 それを取りに来た流川に渡した。 「今日、お前ん家に行く」 ボソリと流川が言ってきた。 「今日は花道来んから」 返事に少しムッとした顔をして流川は行ってしまった。 やれやれと思いながらもどこか断ったことに罪悪感のようなものが湧いていた。 それから流川が洋平へ向ける視線がきつくなった。目が合うわけでもなかったが始終きつい、怒りの感情が向けられているのを洋平は感じていた。 「‥‥怒ってんな」 そう呟いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |