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ハピネス
-5-
あれから二時間ほど寝ていた洋平はむくりと起き上がり、部屋に誰もいないのに気づく。ドアを開けるとテレビの音が聞こえる。
まだ起きてるのに良かったと安堵する。
そのテレビの音のする居間へ行った。
花道がテレビの前に座りビデオを見ていた。
気配に気づき、花道の顔が向けられた。
「起きたのか」
「ああ。悪りぃな。寝こけちまって。あっ、おばさんは?」
「母ちゃんはもう寝た」
壁にかけてある時計を見ると11時になろうとしているところだった。
「メシはご馳走になるわ、揚句の果て寝ちまうわじゃ食い逃げ状態だな」
「おふくろが食わせたいつったんだからいいんだよ」
「俺、帰るわ。おばさんに美味かったって言っといて」
花道はリモコンでビデオを止め、出ていく洋平の後を追った。
「洋平、待てよ。送ってくよ」
玄関で靴を履いている洋平に言うが洋平は断る。
「いいよ。近くなんだしよ」
「でもよ」
「んじゃ、一本目の電信柱までな」
そう言って花道を納得させる。
このぐらいの時間になると歩いている人もいず、等間隔に点在する電柱の電灯だけが二人を足元を煌々と照らしている。
「えらく静かだよな」
洋平は頭の後ろで腕を組んで空を見上げた。
「星が見えるから明日は晴れだな」
「だな」
たわいもない会話だけで一本目の電柱に着いた。
「んじゃ、明日な」
「ああ」
手を振って遠ざかっていく洋平を見送る。
花道は唇に手を触れた。
キスをした洋平の唇の感触が甦る。
「……」

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あきゅろす。
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