-past-
我慢の時期
それから私が中学に入学しても、父と母の関係は酷くなる一方だった。
父が母を罵る言葉は覚えていない…。
ただ母が泣き叫ぶ金切声は、今でも聞こえてくる。
ある日、母は「死ぬんだったら◯◯(私)が生まれてきた所切って死ぬ。」と例の金切声で泣きながら私と父の前で自分のお腹に包丁をあて言いました。
父は止めました。
母は泣いています。
私は手首をえぐりました。
私には何も出来ないから…。
母の借金の為、父は会社を退職しました。
退職金で払いきれると思って居たようです。
母の父も800万出しました。
親戚中に頭を下げ、お金を貸して下さいと母は頼みます。
母の友達にも頭を下げます。
お金の為に友達も友達でなくなります。
借金は減りません。
父の兄も会社を退職し、退職金を借金返済へあてます。
私の実家、父の兄の家、母の弟の家は担保になっています。
家の電話は引っ切り無しに鳴り続けます。
電話に出るのは私。
「母は居ません。」
いつも居留守。
カーテンを閉め、鍵をする。
テレビの音も最小。
電気も付けない。
鳴り続ける電話。
ヤクザからの電話もしょっちゅう。
ヤミ金からも借りて居た。
家が担保になって居る借金が一向に減らなかったのは、母がヤクザが怖いからヤミ金への返済を優先させたから。
電話が怖かった。
電話に出るのは嫌だった。
父は酒に逃げた。
母は男と酒に逃げた。
私は…?
静かに2階へ上がり、部屋の戸を閉める。
窓も閉めきり、カーテンも…
そこに在るのはじめじめとした真暗な世界。
唯一つの私の居場所。
誰も入らないで。
何も聞きたくない。
私はCDプレイヤーに手を掛け、音量を最大にする。
何も聞きたくないから…
私は何でもない。
人と言うモノを被った…
何でもないモノ。
助けてなんて思わなかった。
遺書を書いた。
手首をえぐる。
死ねっこないよ、そんなんじゃ。
今はそう、我慢の時。
何時か必ず変わるから…
そう信じた2年間。
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