非日常が日常です(完結)
2
やっと今日の予定が決まり六人で動き出す。
修学旅行のテンションで女子が色目でも使ってくるかと思ったがなんてことはない。仲良し組だろう三人で先ほどと同じきゃっきゃと話をしているだけだ。
ほっと安心する平田と大崎はまずは旅行を楽しもうとパンフレットを眺め始める。
すると前を歩く修也が歩みを止めた。
おかしいと思いそちらを向けば、知らない男が修也に話しかけているではないか。
「ちょっと高校生君、道に迷っちゃってね。ここ知らないかな?」
「えーと、俺も旅行で来たんで詳しくないんですけど。地図なら持ってます」
――ちょっと目を離しただけなのに、男ホイホイかこいつ!
ほぼ平田たちの所為であるが、最近の修也に言い寄る男の数が半端ではない気がしてきた。
今はただ道を聞いているだけだとしても、わざわざ修学旅行と分かる高校生に話しかけたりはしない。
つまり、何かしらの下心があるとみて間違いないだろう。
フェロモンの類でも出ているのかもしれないと本気で心配になる。
修也も気の良い性格で、交番行ったらいいとか知らないとか言えばいいのに地図を広げて一緒に目的地を探してしまっているのが実に危なっかしい。
「ホテルなんだけど」
「えーとここは……って、ここ俺たちが泊まるとこですよ」
「マジで?奇遇だね!」
――オイオイオイオイ!!
何の偶然かホテルが同じだなんて危険度が急激に増したことに戦く平田に大崎。
ホイホイ過ぎて頭が痛くなってくる。
二人の心配をよそに、修也は男と親し気に話しだした。
「一人旅なんですか?」
「そ、大学のレポートの研究も兼ねてだけど」
「へー大学生なんですね」
「うんうん。ありがとね、またホテルで会ったらよろしく」
「こちらこそ」
「ほ、ほら修ちゃん急がないとバス間に合わなくなるよ」
「ほんとか?ごめん、じゃあ行こっか」
「ありがとね〜」
「いえ!失礼します」
大崎に急かされ男に手を振られながら別れる。修也もつられて手を振れば、ずりずりと平田に引きずられた。
「今の人結構イケメンじゃなかった?」
話に夢中だった女子たちが去っていく男に気が付いたらしく嬉しそうに言う。
それに合わせて「そうだね」と言う修也に、大崎はぎりぃっとなった。
「はいっチーズゥ」
「チーズって最後「ズ」だから笑顔にならなくね?」
「確かに。「チー」で終わっとかないとダメだな」
「ねー自分のお土産こっちとこっちどっちがいいかな?」
「こっちじゃない?」
「えー、こっちのが良くない?二つ並べて見せる時、女の子は選んでほしい方を若干前に出してアピールしてんだから」
「いや、じゃあ最初っからそっち買えよ!」
「最後の一押しが欲しいっていうか」
「めんど!女子めんど!」
地元のバスに乗り込み寺巡りをして写真を撮り土産を買う。
それぞれで楽しんだり文句を言い合ったりしながら、修学旅行を満喫した。
集合時間が近づき全員で向かえばすでに学校のバスが到着しており、乗り込んでホテルに着くまでの数十分を仮眠に使う。
まだそれほど疲れていないのだが、きっと夜には同室の生徒たちで夜更かしするのが目に見えているので、今の内に睡眠を確保しておくのだ。
「雅則ー着いたぞ」
「……んっ?修也?」
「おー、貴雄はもう起きてる」
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